2013年8月9日金曜日

【目次】

  はじめに
  1.認知  2.相反するもの  3.争いの素  4.無限のつながり  5.無分別
  6.無尽蔵  7.永く保つ秘けつ  8.水形  9.引き際  10.反省

  11.空間の利用  12.幻惑  13.感情移入  14.無知無感  15.無垢
  16.静観  17.愚鈍  18.結果の本質  19.有効利用  20.判断材料

  21.跡継ぎ  22.自然体  23.流体力  24.過剰  25.未知
  26.隠れた本質  27.適材適所  28.窪みに宿る  29.無駄な努力
  30.手に余るモノ  31.諸刃の刃  32.奇正  33.役目  34.受け身
  35.有欲  36.加減  37.独占  38.対人関係  39.目のつけ所
  40.動かすきっかけ  41.道理  42.二面性  43.女性  44.保持力
  45.見極める  46.失敗の備え  47.感性  48.一芸  49.芯を持つ

  50.死  51.順序  52.目標  53.苦楽  54.樹を観る  55.幼稚
  56.地味  57.簡易  58.放任  59.未完  60.察知  61.分析
  62.死生力  63.些細  64.違う視点  65.行動基準  66.指揮
  67.三つの貴重なモノ  68.間合い  69.即決  70.周知  71.知識

  72.個の集結  73.勇気  74.専門  75.生きる希望  76.変化
  77.隠遁  78.不惑  79.仲裁  80.自給自足  81.交渉

81.交渉

○老子の原文を道具として解釈したもの

 情報には悪い真実もあれば良い嘘もある。
 人には悪い無口もあれば良い多弁もある。
 悪い知恵もあれば良い無知もある。
 どちらも過信しないことだ。
 人に伝えたことが自分にかえってきたり、
人に教えたことで自分の知識が増えたりする。
 自然を知ることは利益になり、損はしない。
 人を知れば成長でき、災いを防ぐことがで
きる。


○老子の読み下し文

 信言は美ならず、美言は信ならず。
 善なる者は弁ぜず、弁ずる者は善ならず。
 知る者は博(ひろ)からず、博き者は知らず。
 聖人は積まず。
 既く以て人のためにして、己は愈々(いよい
よ)あり、既く以て人に与えて、己は愈々多し。
 天の道は、利してしかも害せず。
 聖人の道は、なしてしかも争わず。


○老子の原文

 信言不美、美言不信。
 善者不弁、弁者不善。
 知者不博、博者不知。
 聖人不積。
 既以為人、己愈有、既以与人、己愈多。
 天之道、利而不害。
 聖人之道、為而不争。
                  完

2013年8月8日木曜日

80.自給自足

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人が安心して集まる所は、広さに適した人
数がよく、争いになるような道具は使わない。
 そんな所なら、命をかけてまで他には行か
ないものだ。
 船や車には乗る機会がなく、武器も使う機
会がない。
 自分のできることは自分でする。
 そこにある食べ物を食べ、そこにある服を
着て、そこに住み、生活を楽しむ。
 すぐ近くに他人が住んでいても干渉はしな
い。


○老子の読み下し文

 小国寡民(かみん)、什伯(じゅうはく)の器
ありて用いることなからしむ。
 民をして死を重んじて遠く徒(うつ)らざら
しむ。
 舟輿(しゅうよ)ありといえども、これに乗
る所なく、甲兵ありといえども、これを陳(つ
ら)ぬる所なし。
 人をしてまた縄を結びてこれを用いる。
 その食を甘しとし、その服を美とし、その
居に安んじ、その俗を楽しましむ。
 隣国相望み、鶏犬の声相聞こえて、民老死
に至るまで、相往来せず。


○老子の原文

 小国寡民、使有什伯之器而不用。
 使民重死而不遠徒。
 雖有舟輿、無所乗之、雖有甲兵、無所陳之。
 使民復結縄而用之。
 甘其食、美其服、安其居、楽其俗。
 隣国相望、鶏犬之声相聞、民至老死、
不相往来。

2013年8月7日水曜日

79.仲裁

○老子の原文を道具として解釈したもの

 ケンカを仲裁すれば恨みをかう。
 どうすればよいか。
 それは、どちらかに味方し、片方を責めた
りしないこと。
 両方に距離を置くのが良く、どちらかを悪
者にしない。
 自然は親身にならず、すべてを良しとする。


○老子の読み下し文

 大怨(だいえん)を和するも、必ず余怨(よ
えん)あり。
 安(いず)くんぞ以て善となすべけんや。
 ここを以て聖人は左契(さけい)を執りて、
しかも責めず。
 徳あるものは、契を司り、徳なきものは、
徹を司る。
 天道は親なく、常に善人に与(くみ)す。


○老子の原文

 和大怨、必有余怨。
 安可以為善。
 是以聖人孰左契而不責於人。
 有得司契、無徳司徹。
 天道無親、常与善人。

2013年8月6日火曜日

78.不惑

○老子の原文を道具として解釈したもの

 水は不思議なモノだ。
 動じないモノでも動かすことができる。
 それはモノの弱いところにつけ込めるから
だ。
 弱いものが強いものに勝ち、柔らかいもの
が固いものを呑みこむのを見ることはあるが、
それを防げない。
 それを防ぐ方法は、侮辱をされても怒らず
動揺しない、災いがあっても事実を受けとめ、
周りを疑わないこと。
 情報に惑わされないことだ。


○老子の読み下し文

 天下に水より柔弱なるはなし。
 しかして堅強を攻むる者、これに能く勝る
なし。
 その以てこれを易(か)うるなきを以てなり。
 弱の強に勝ち、柔の剛に勝つは、天下知ら
ざるはなきも、能く行うなし。
 ここを以て聖人の言に、国の垢(あか)を受
くる、これを社稷(しゃしょく)の主と言い、
国の不祥を受くる、これを天下の王と言う。
 正言は反するが若(ごと)し。


○老子の原文

 天下莫柔弱於水。
 而攻堅強者、莫之能勝。
 以其無以易之。
 弱之勝強、柔之勝剛、天下莫不知、莫能行。
 是以聖人之言云、受国之垢、是謂社稷主、
受国之不祥、是謂天下王。
 正言若反。

2013年8月5日月曜日

77.隠遁

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然は弓に弦を張るのに似ている。
 弓は堅強にした中心を押さえ、柔弱な両端
を曲げて弦を張る。
 強いものは抑え、弱いものは自由にする。
 自然も同じで、強い生き物は少なく抑え、
弱い生き物は種類も量も多く盛んにする。
 人のやることは、足らないところをさらに
飢えさせ、余っているところを盛大にする。
 なぜそんなことになるのか。
 分かっている者は少ない。
 分かっている者は、所有するものは少なく、
仕事を成し遂げたら退く。
 高い地位にはいない。


○老子の読み下し文

 天の道は、それなお弓を張るがごとき。
 高き者はこれを抑え、下き者はこれを挙ぐ。
 余りある者はこれを損し、足らざる者はこ
れを補う。
 天の道は、余りあるを損して、足らざるを
補う。
 人の道は足らざるを損して、以て余りある
に奉ず。
 孰(だれ)かよく余りありて、以て天下に奉
ずるものぞ。
 ただ有道者のみ。
 ここを以て聖人は、なして恃(たの)まず、
功成りて処(お)らず。
 それ賢を見わすことを欲せず。


○老子の原文

 天之道、其猶張弓与。
 高者抑之、下者挙之。
 有余者損之、不足者補之。
 天之道、損有余而補不足。
 人之道則不然。
 損不足以奉有余。
 孰能有余以奉天下。
 唯有道者。
 是以聖人為而不恃、功成而不処。
 其不欲見賢。

2013年8月4日日曜日

76.変化

○老子の原文を道具として解釈したもの

 生きていれば動く、死ねば硬直する。
 木は生きている時は盛衰をくりかえし、死
んだ時は保たれる。
 だから凝り固まり保つだけでは滅ぶ。
 変化して盛衰することを受け入れれば発展
する。
 集団がどんなに優れていても退却すること
があり、巨木も落葉する。
 変化を拒むのは悪い考え方で、変化を受け
入れるのは良い考え方だ。


○老子の読み下し文

 人の生まるるや柔弱、その死するや堅強な
り。
 万物草木の生ずるや柔脆(じゅうぜい)、そ
の死するや枯槁(ここう)す。
 故に堅強なる者は死の徒なり。
 柔弱なる者は生の徒なり。
 ここを以て兵強ければ則ち勝たず。
 木強ければ則ち共(お)る。
 強大は下に処(お)り、柔弱は上に処る。


○老子の原文

 人之生也柔弱、其死也堅強。
 万物草木之生也柔脆、其死也枯槁。
 故堅強者死之徒。
 柔弱者生之徒。
 是以兵強則不勝。
 木強則共。
 強大処下、柔弱処上。