2013年7月31日水曜日

72.個の集結

○老子の原文を道具として解釈したもの

 集団の力を利用しなければ、どんな権力も
役に立たない。
 それには、集団を行動不自由にしないこと。
 個々の生活を邪魔しないこと。
 生活を邪魔しないから集団になる。
 個々の生活は違うのだから強制はしない。
 自由はあるが役割も与える。
 だから集団の力になるのだ。


○老子の読み下し文

 民、威を畏(おそ)れざれば、則ち大威至る。
 その居る所を狎(せば)むることなかれ。
 その生くる所を厭(おさ)えることなかれ。
 それただ厭えず、ここを以て厭(いと)わず。
 ここを以て聖人は、自ら知りて自ら見(あら
わ)さず。
 自ら愛して自ら貴しとせず。
 故に彼を去てて、これを取る。


○老子の原文

 民不畏威、則大威至。
 無狎其所居。
 無厭其所生。
 夫唯不厭、是以不厭。
 是以聖人自知不自見。
 自愛不自貴。
 故去彼取此。

2013年7月30日火曜日

71.知識

○老子の原文を道具として解釈したもの

 知っていることが全てとは言えない。
 だから分かっているとは言えない。
 知っていることを確かめて、はじめて分かっ
てくる。
 何でも分かるとは。
 それは、分かったことからまた新しいこと
を知ることができ、その積み重ねをすること
だ。


○老子の読み下し文

 知りて知らずとするは上なり。
 知らずして知るとするは病なり。
 それただ病を病とす、ここを以て病あらず。
 聖人は病あらず。
 その病を病とす、ここを以て病あらず。


○老子の原文

 知不知上。
 不知知病。
 不唯病病、是以不病。
 聖人不病。
 以其病病、是以不病。

2013年7月29日月曜日

70.周知

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然は隠さず見せ、隠さず実行している。
 だけどそれが見過ごされ、実行もされない。
 そこには誕生の秘密があり、成長の秘密が
ある。
 これが分からなければ自分のことも分から
ない。
 自分のことが分かれば尊ばれる。
 そんな人は普通にしていても、利益が入っ
てくる。


○老子の読み下し文

 吾が言は甚だ知り易く、甚だ行い易し。
 天下能く知るなく、能く行うもなし。
 言に宗あり、事に君あり。
 それただ知ることなし、ここを以て我を知
らず。
 我を知る者希にして、我に則る者貴(とぼ)
し。
 ここを以て聖人は褐(かつ)を被(き)て玉を
懐(いだ)く。


○老子の原文

 吾言甚易知、甚易行。
 天下莫能知、莫能行。
 言有宗、事有君。
 不唯無知、是以不我知。
 知我者希、則我者貴。
 是以聖人被褐懐玉。

2013年7月28日日曜日

69.即決

○老子の原文を道具として解釈したもの

 指示を出すときは傲慢にならず、ささいな
ことにも気を配る。そして、前進はゆっくり
と、後退は早く動かす。
 これは災いを未然に防ぎ、災いの芽を摘み、
被害を最小限にし、災いそのものをなくすた
めだ。
 災いは見過ごせば大きくなり、取り返しが
つかなくなる。
 だから、傷つくことは覚悟して、早く解決
するのだ。


○老子の読み下し文

 兵を用うるに言えることありて、吾、敢え
て主とならずして客となり、敢えて寸を進ま
ずして尺を退く。
 これを行くに行(みち)なく、攘(はら)うに
臂(ひじ)なく、執(と)るに兵なく、つくに敵
なしと言う。
 禍は敵を軽んずるより大なるはなく、敵を
軽んずれば、幾(ほとん)ど吾が宝を喪(うしな)
わん。
 故に兵を抗(あ)げて相加うるに、哀しむ者
勝つ。


○老子の原文

 用兵有言、吾不敢為主而為客、
不敢進寸而退尺。
 是謂行無行、攘無臂、執無兵、ツ無敵。
 禍莫大於軽敵。軽敵、幾喪吾宝。
 故抗兵相加、哀者勝矣。

2013年7月27日土曜日

68.間合い

○老子の原文を道具として解釈したもの

 指示するものは動かない。
 よく動くものは狙いをはずさない。
 生き残るものは同じことを繰り返さない。
 役に立つものは他の動きに合わせる。
 これで災いを防げ、力を発揮し、自由に行
動できる。
 昔から行われていることだ。


○老子の読み下し文

 善く士たる者は武ならず。
 善く戦うものは怒らず。
 善く敵に勝つものはともにせず。
 善く人を用うる者はこれが下となる。
 これを争わざるの徳と言い、これを人の力
を用うと言い、これを天に配すと言う。
 古えの極なり。


○老子の原文

 善為士者不武。
 善戦者不怒。
 善勝敵者不与。
 善用人者為天下。
 是謂不争之徳、是謂用人之力、是謂配天。
 古之極。

2013年7月26日金曜日

67.三つの貴重なモノ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 大き過ぎるものは認識できない。
 認識できないぐらい大きいのだ。
 認識できていたらすでに奪い合ってなくなっ
ている。
 それには三つの貴重なモノがあるからだ。
 一つは、育てる力。
 一つは、無駄をなくす力。
 一つは、退く力。
 育てるには勇気がいる。
 無駄がないから広まる。
 退くから継承できる。
 もし、育てず、無駄をし、退くこともなけ
れば滅ぶ。
 育てる力があればどんな困難にも立ち向か
え、守りとおせる。
 育てているものには誰も手出しができない。


○老子の読み下し文

 天下皆我が道を大にして不肖(ふしょう)に
似たりと言う。
 それただ大、故に不肖に似たり。
 もし肖(しょう)ならば、久しいかな、その
細たることや。
 我に三宝あり、持してこれを宝とす。
 一に、慈。
 二に、倹。
 三に、敢えて天下の先とならず。
 慈、故に能く勇なり。
 倹、故に能く広し。
 敢えて天下の先とならず、故に能く成器の
長たり。
 今、慈を舎(す)てて、まさに勇ならんとし、
倹を舎てて、まさに広からんとし、後を舎て
て、まさに先んぜんとすれば、死せん。
 それ慈は、以て戦えば則ち勝ち、以て守れ
ば則ち固し。
 天まさにこれを救わんとし、慈を以てこれ
を衛(まも)る。


○老子の原文

 天下皆謂我道大似不肖。
 夫唯大、故似不肖。
 若肖、久矣、其細也夫。
 我有三宝、持而宝之。
 一曰、慈。
 二曰、倹。
 三曰、不敢為天下先。
 慈故能勇。
 倹故能広。
 不敢為天下先、故能成器長。
 今舍慈且勇、舍倹且広、舍後且先、死矣。
 夫慈矣戦則勝、以守則固。
 天将救之、以慈衛之。

2013年7月25日木曜日

66.指揮

○老子の原文を道具として解釈したもの

 集団に指示しようとすれば、その集団の目
線に下りる。
 だからうまく行動させられる。
 指示は全体にいきわたるような分かりやす
い言葉を使う。
 集団から取り残されたものがいないか、よ
く確認する。
 そして集団と一体になって行動を共にする。
 だから集団は指示に従うのだ。
 そんな集団とは誰も争わない。


○老子の読み下し文

 江海の能く百谷の王たる所以の者は、その
能くこれに下るを以てなり。
 故に能く百谷の王なり。
 ここを以て、民に上たらんと欲すれば、必
ず言を以てこれに下る。
 民に先んぜんと欲すれば、必ず身を以てこ
れに後(おく)る。
 ここを以て聖人は、上に処(お)りて民重し
とせず、前に処りて民害とせず。
 ここを以て天下、推(お)すを楽しんで厭(い
と)わず。
 その争わざるを以て、故に天下能くこれと
争うなし。


○老子の原文

 江海所以能為百谷王者、以其善下之。
 故能為百谷王。
 是以欲上民、必以言下之。
 欲先民、必以身後之。
 是以聖人処上而民不重、処前而民不害。
 是以天下楽推而不厭。
 以其不争、故天下莫能与之争。

2013年7月24日水曜日

65.行動基準

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人を手本にはしない。
 人からは影響を受けない。
 人の情報に左右されると混乱する。
 だから、人の情報だけで行動はできない。
 自分で確認して行動するほうがいい。
 情報と確認は切り離せない。
 これをふまえて行動する。
 行動は慎重に、よく見極めること。
 人とは違った行動になっても結果が悪いと
は限らない。


○老子の読み下し文

 古えの善く道をおさめし者は、以て民を明
にするにあらず。
 まさに以てこれを愚にせんとす。
 民の治め難きは、その智多きを以てなり。
 故に智を以て国を治むるは、国の賊。
 智を以て国を治めざるは、国の福。
 この両者を知るも、また稽式(けいしき)な
り。
 常に稽式を知る、これを玄徳と言う。
 玄徳は深いかな、遠いかな。
 物と反すれども、しかる後にすなわち大順
に至る。


○老子の原文

 古之善為道者、非以明民。
 将以愚之。
 民之難治、以其智多。
 故以智治国、国之賊。
 不以智治国、国之福。
 知此両者、亦稽式。
 常知稽式、是謂玄徳。
 玄徳深矣遠矣。
 与物反矣、然後及至大順。

2013年7月23日火曜日

64.違う視点

○老子の原文を道具として解釈したもの

 楽にしていれば持続し、変化を見せなけれ
ば企みがあり、動揺していれば別れ、ひっそ
りしていれば逃げていく。
 動きがないときに行動し、動き出したら止
まる。
 木は土の中から生長し、塔は平らな場所に
建ち、歩くときに両足は別れる。
 これに対応すればうまくいき、無理に行動
すれば失敗する。
 よく観察すること。
 無駄な行動はしないこと。
 普通は災いがひどくなって慌てる。
 後々どうなるかを考えれば、すぐに実行で
きる。
 そして、必要なことはするが、誘いにはの
らない。
 他とは違う視点で考え、度をこさないよう
にする。
 自然の流れにのって逆らわない。


○老子の読み下し文

 その安きは持し易く、そのいまだ兆さざる
は謀り易く、その脆(もろ)きは判(わか)ち易
く、その微なるは散らし易し。
 これをいまだあらざるになし、これをいま
だ乱れざるに治む。
 合抱(ごうほう)の木は、毫末(ごうまつ)に
生じ、九層の台は、累土(るいど)に起こり、
千里の行は、足下に始まる。
 なす者はこれを敗り、執(と)る者はこれを
失う。
 ここを以て聖人は、なすことなきが故に敗
るることなし。
 執ることなきが故に失うことなし。
 民の事に従うや、常に幾(ほと)んど成らん
とするにおいてこれを敗る。
 終りを慎むこと始めの如くんば、すなわち
事を敗ることなし。
 ここを以て聖人は、欲せざるを欲して、得
難きの貨を貴ばず。
 学ばざるを学んで、衆人の過(あやま)つ所
を復す。
 以て万物の自然を輔(たす)けて、あえてな
さず。


○老子の原文

 其安易持、其未兆易謀、其脆易判、
其微易散。
 為之於未有、治之於未乱。
 合抱之木、生於毫末、九層之台、起於累土、
千里之行、始於足下。
 為者敗之、執者失之。
 是以聖人無為故無敗。
 無執故無失。
 民之従事、常為幾成而敗之。
 慎終如始、則無敗事。
 是以聖人欲不欲、不貴難得之貨。
 学不学、復衆人之所過。
 以輔万物之自然、而不敢為。

2013年7月22日月曜日

63.些細

○老子の原文を道具として解釈したもの

 誰にも出来ないことをやり、正常な時に用
心し、利益にならないこともする。
 ささいなことは見落としがち、たいしたこ
とがないのは重大なこと、救いを求められれ
ば助ける。
 難しければ分担し、大きければ細かくする。
 難しいことは簡単なものからでき、大きい
ものは小さなものからできている。
 小さなことの積み重ねが大きなことになる。
 簡単なことは利益が少なく、楽になれば人
手が余る。
 だから誰もやろうとしないので、あえてや
るのだ。
 やれば無駄がなくなる。


○老子の読み下し文

 無為をなし、無事を事とし、無味を味わう。
 小を大とし少を多とし、怨みに報いるに徳
を以てす。
 難をその易に図り、大をその細になす。
 天下の難事は、必ず易より作(おこ)り、天
下の大事は、必ず細より作る。
 ここを以て聖人は終(つい)に大をなさず、
故に能くその大をなす。
 それ軽諾(けいだく)は必ず信すくなく、易
しとすること多ければ、必ず難きこと多し。
 ここを以て聖人は、なおこれを難しとす。
 故に終に難きことなし。


○老子の原文

 為無為、事無事、味無味。
 大小多少、報怨以徳。
 図難於其易。為大於其細。
 天下難事、必作於易、天下大事、必作於細。
 是以聖人終不為大、故能成其大。
 不軽諾必寡信、多易必多難。
 是以聖人猶難之。
 故終無難矣。

2013年7月21日日曜日

62.死生力

○老子の原文を道具として解釈したもの

 本当に大切なものは隠れている。
 それは誰もがほしがるものだ。
 上手い話や勇敢な行動は目立つ。
 悪い話や卑怯な行動だからといって見逃し
てはいけない。
 これは権力や財力、知力を使っても手に入
れることはできず、死生力が必要になる。
 死生力はどうすれば得られるのか。
 それは自然から学び、自然には悪いことも
含まれていることを知る。
 そうまでして手に入れたいものだ。


○老子の読み下し文

 道は万物の奥なり。
 善人の宝、不善人の保つ所なり。
 美言は以て尊を市(か)うべく、美行は以て
人に加わうべし。
 人の不善なる、何の棄つることか、これあ
らん。
 故に、天子を立て、三公を置くに、拱璧(こ
うへき)を以て駟馬(しば)に先だつありと
いえども、坐してこの道を進むるに如かず。
 古のこの道を貴ぶ所以(ゆえん)の者は何ぞ。
 求めて以て得られ、罪ありて以て免(まぬ
が)ると言わずや。
 故に天下の貴となる。


○老子の原文

 道者万物之奥。
 善人之宝、不善人之所保。
 美言可以市尊、美行可以加人。
 人之不善、何棄之有。
 故立天子、置三公、雖有拱璧以先駟馬、
不如坐進此道。
 古之所以貴此道者何。
 不曰求以得、有罪以免耶。
 故為天下貴。

2013年7月20日土曜日

61.分析

○老子の原文を道具として解釈したもの

 情報を集める者が主導権を握る。
 情報は混在している。
 そして、常に変化する。
 情報は分析される。
 分析すると答えが見つかる。
 多くの情報を細かく分ければ、ささいな違
いも見つけられる。
 その蓄積があれば少ない情報でも色々なこ
とが分かり判断できる。
 多くの情報から見つけ、少ない情報から判
断する。
 情報が多いと、いらないものを含み、情報
が少ないのは全体の中の一部だからだ。
 まずは多くの情報を集めることだ。


○老子の読み下し文

 大国は下流なり。
 天下の交なり。
 天下の牝(ひん)なり。
 牝は常に静を以て牡に勝つ。
 静を以て下ることをなす。
 故に、大国以て小国に下れば、則ち小国を
取る。
 小国以て大国に下れば、則ち大国に取らる。
 故に、或いは下りて以て取り、或いは下り
てしかして取らる。
 大国は人を兼ね畜(やしな)わんと欲するに
過ぎず、小国は入りて人に事(つか)えんと欲
するに過ぎず。
 それ両者、各々その欲するところを得んと
ならば、大いなる者よろしく下ることをなす
べし。


○老子の原文

 大国者下流。
 天下之交。
 天下之牝。
 牝常以静勝牡。
 以静為下。
 故大国以下小国、則取小国。
 小国以下大国、則取於大国。
 故或下以取、或下而取。
 大国不過欲兼畜人、小国不過欲入事人。
 不両者各得其所欲、大者宜為下。

2013年7月19日金曜日

60.察知

○老子の原文を道具として解釈したもの

 混乱は防がなければいけない。
 自然に逆らわなければ災いにならない。
 災いが起きてもそれを利用することさえで
きる。
 周りから不満も起きなくなる。
 だから混乱せず、利益さえ得られるのだ。


○老子の読み下し文

 大国を治むるは、小鮮を烹(に)るがごとし。
 道を以て天下に涖(のぞ)めば、その鬼、神
ならず。
 その鬼、神ならざるにあらず、その神、人
を傷(そこな)わず。
 その神、人を傷わざるにはあらず、聖人も
また人を傷わず。
 それ両(ふた)つながら相傷わず、故に徳、
交々(こもごも)帰す。


○老子の原文

 治大国、若烹小鮮。
 以道涖天下、其鬼不神。
 非其鬼不神、其神不傷人。
 非其神不傷人、聖人亦不傷人。
 夫両不相傷、故徳交帰焉。

2013年7月18日木曜日

59.未完

○老子の原文を道具として解釈したもの

 完璧を求めない。
 完璧ではないから反省できる。
 反省をかさねて新しい発想を身につける。
 新しい発想で他に差をつけることができる。
 他に差をつけると限りなく使われる。
 限りなく使われるから廃れることがない。
 完璧を求めなければ長く役に立つことにな
る。
 自然は完璧ではないから限りがないのだ。


○老子の読み下し文

 人を治め天に事(つか)うるは、嗇(しょ
く)に若(し)くはなし。
 それただ嗇、これを早く服すと言う。
 早く服する、これを重ねて徳を積むと言う。
 重ねて徳を積めば、則ち克(か)たざるなし。
 克たざるなければ、則ちその極を知るなし。
 その極を知るなければ、以て国を有(たも)
つべし。
 国を有つの母は、以て長久なるべし。
 これを深根固柢(しんこんこてい)、長生
久視(ちょうせいきゅうし)の道と言う。


○老子の原文

 治人事天、莫若嗇。
 夫唯嗇、是謂早服。
 早服、謂之重積徳。
 重積徳、則無夫克。
 無不克、則莫知其極。
 莫知其極、可以有国。
 有国之母、可以長久。
 是謂深根固柢、長生久視之道。

2013年7月17日水曜日

58.放任

○老子の原文を道具として解釈したもの

 困っていれば助けられる。
 警戒心が強くなれば失いやすい。
 災いから利益が生まれる。
 利益の中にも災いがある。
 どちらが良いとは言えない。
 正しいとも言えない。
 状況は常に変化する。
 戸惑うのが普通だ。
 だから、決めつけず、追いやらず、押し付
けず、明らかにしないこと。


○老子の読み下し文

 その政、悶々たれば、その民、淳々たり。
 その政、察々たれば、その民、欠々たり。
 禍か福の倚(よ)る所。
 福か禍の伏す所。
 孰(だれ)かその極を知らん。
 それ正なし。
 正また奇となり、善また妖となる。
 人の迷うや、その日もとより久し。
 ここを以て聖人は、方にして割かず、廉に
して刺さず、直にして肆(し)ならず、光あり
て燿(かがや)かさず。


○老子の原文

 其政悶悶、其民淳淳。
 其政察察、其民欠欠。
 禍兮福倚。
 福兮禍所伏。
 孰知其極。
 其無正。
 正復為奇、善復為妖。
 人之迷、其日固久。
 是以聖人方而不割、廉而不刺、直而不肆、
光而不燿。

2013年7月16日火曜日

57.簡易

○老子の原文を道具として解釈したもの

 周りに理解されて存在し、他にないから使
われて役に立ち、やがて広まる。
 これが自然の流れだ。
 利益を独占すると発展しなくなる。
 使い方が理解できないモノは混乱する。
 手に入れにくいモノは真似され、悪いモノ
が増える。
 伝えることが多くなれば間違えも多くなる。
 だから、欲張らなければ新たなモノが生ま
れ、単純にすれば分かりやすく、行き渡るよ
うにすれば喜ばれ、要点だけ分かれば工夫す
る。


○老子の読み下し文

 正を以て国を治め、奇を以て兵を用い、無
事を以て天下を取る。
 吾何を以てその然るを知るや、ここを以て
す。
 天下に忌諱(きい)多くして、民いよいよ貧
し。
 民に利器多くして、国家ますます昏(くら)
し。
 人に技巧多くして、奇物ますます起こる。
 法令ますます彰かにして、盗賊多くあり。
 故に聖人は言う。
 我無為にして民自ら化し、我静を好みて民
自ら正しく、我無事にして民自ら富み、我無
欲にして民自ら樸なり。


○老子の原文

 以正治国、以奇用兵、以無事取天下。
 吾何以知其然哉、以此。
 天下多忌諱、而民弥貧。
 民多利器、国家滋昏。
 人多伎巧、奇物滋起。
 法令滋彰、盜賊多有。
 故聖人云。
 我無為而民自化、我好静而民自正、
我無事而民自富、我無欲而民樸。

2013年7月15日月曜日

56.地味

○老子の原文を道具として解釈したもの

 知恵があれば態度で示し、知恵がなければ
言い訳する。
 すべての情報を閉ざし、危険を避け、争い
を防ぎ、身をひそめて目立つことはしない。
 これで他と同化できる。
 だから近くにいても分からない。
 そんなものからは利益は得られないし、盗
むこともできない。
 役に立つとは思えないし、害にもならない。
 だから信頼されるのだ。


○老子の読み下し文

 知る者は言わず、言う者は知らず。
 その兌(あな)を塞(ふさ)ぎ、その門を閉ざ
し、その鋭を挫(くじ)き、その紛を解き、そ
の光を和らげ、その塵(よご)れに同じくす。
 これを玄同と言う。
 故に、得て親しむべからず、得て疎(うとん)
ずべからず。
 得て利すべからず、得て害すべからず、得
て貴ぶべからず、得て賤しむべからず。
 故に天下の貴となる。


○老子の原文

 知者不言、言者不知。
 塞其兌、閉其門、挫其鋭、解其紛、和其光、
同其塵。
 是謂玄同。
 故不可得而親、不可得而疎。
 不可得而利、不可得而害。
 不可得而貴、不可得而賤。
 故為天下貴。

2013年7月14日日曜日

55.幼稚

○老子の原文を道具として解釈したもの

 生まれたては守られる。
 どんな生き物も自分の子孫は守ろうとする。
 生まれたばかりのときは、自然に身を任せ
る。
 だけど生きるための能力は備わっている。
 だから育てられる方法を知っている。
 その方法が生命力であり、精神力になる。
 生命力はどうすることもできないが、精神
力は鍛えられる。
 これらには寿命がある。
 どうすることもできない。
 無理をすれば失う。


○老子の読み下し文

 徳を含むことの厚きは、赤子に比す。
 蜂、タイ、キ蛇(だ)も螫(さ)さず、猛獣も
據(つか)まず、攫(かく)鳥(ちょう)も搏(う)
たず。
 骨弱くし筋柔らかくして握ること固し。
 いまだ牝牡(ひんぼ)の合を知らずして、さ
い作(た)つは、精の至りなり。
 終日ないて嗄(こえか)れざるは、和の至り
なり。
 和を知るを常と言い、常を知るを明と言う。
 生を益すを祥(わざわい)と言い、心気を使
うを強と言う。
 物は壮なれば、すなわち老ゆ。
 これを不道と言う。
 不道は早く已(や)む。


○老子の原文

 含徳之厚、比於赤子。
 蜂タイキ蛇不螫、猛獣不據、攫鳥不搏。
 骨弱筋柔而握固。
 未知牝牡之合而サイ作、精之至也。
 終日号而不嗄、和之至也。
 知和曰常、知常曰明、益生曰祥、心使気曰強。
 物壮則老。
 謂之不道。
 不道早已。

2013年7月13日土曜日

54.樹を観る

○老子の原文を道具として解釈したもの

 木の根が張っていれば倒れにくい。
 木の中に殖える能力があり、どこからでも
成長する。
 だから世話をしなくても絶えることがない。
 この力があれば耐えられる。
 この知恵があれば利益が得られる。
 これを継承できれば長続きする。
 これを守れば災いを防ぐことができる。
 これを広めれば争うことはない。
 これがそれぞれ実現できているかを調べる。
 そうすれば世の中のことが分かる。
 手本は身近にある。


○老子の読み下し文

 善く建つ者は抜けず。
 善く抱く者は脱(お)ちず。
 子孫以て祭祀して輟(や)まず。
 これを身に修むれば、その徳すなわち真な
り。
 これを家に修むれば、その徳すなわち余り。
 これを郷に修むれば、その徳すなわち長く。
 これを邦(くに)に修むれば、その徳すなわ
ち豊かなり。
 これを天下に修むれば、その徳すなわち普
(あまね)し。
 故に、身を以て身を観、家を以て家を観、
郷を以て郷を観、邦を以て邦を観、天下を以
て天下を観る。
 吾、何を以てか天下の然るを知るや。
 これを以てす。


○老子の原文

 善建者不抜。
 善抱者不脱。
 子孫以祭祀不輟。
 修之於身、其徳乃真。
 修之於家、其徳乃余。
 修之於郷、其徳乃長。
 修之於邦、其徳乃豊。
 修之於天下、其徳乃普。
 故以身観身、以家観家、以郷観郷、
以邦観邦、以天下観天下。
 吾何以知天下然哉。
 以此。

2013年7月12日金曜日

53.苦楽

○老子の原文を道具として解釈したもの

 目標を達成することは難しい。
 目標が簡単なことでも努力をしない。
 目先の楽なことにとらわれて、辛いことを
後回しにする。
 自分のことには関心をもち、利益を求め、
楽しみ、豊かになることを望む。
 これらは世の中の利益にならない。
 だから乱れている。


○老子の読み下し文

 我をして介然(かいぜん)として、知あらし
むれば、大道を行きて、ただ施(よこしま)な
るをこれ畏(おそ)れん。
 大道は甚(はなは)だ夷(たいら)かなるに、
民は径(こみち)を好む。
 朝は甚だ除(きよ)められ、田は甚だ蕪(あ)
れ、倉は甚だ虚しき。
 文綵(ぶんさい)を服し、利剣を帯び、飲食
に厭(あ)き、財貨余りあり。
 これを盗夸(とうこ)と言う。
 道に非ざるかな。


○老子の原文

 使我介然有知、行於大道、唯施是畏。
 大道甚夷、而民好径。
 朝甚除、田甚蕪、倉甚虚。
 服文綵、帯利剣、厭飲食、財貨有余。
 是謂盜夸。
 非道也哉。

2013年7月11日木曜日

52.目標

○老子の原文を道具として解釈したもの

 この世も生み出されたものだ。
 その存在を知り、後に伝え、それを発展さ
せ、また後に伝えていけば災いは防げる。
 この世の成り行きから外れなければ混乱は
ない。
 外れた行動をすれば災いがふりかかる。
 ささいな事を見落とさず臨機応変に行動す
る。
 災いになる前に対応すれば災いをなくすこ
とができる。
 日頃から情報を得ることだ。


○老子の読み下し文

 天下に始めあり、以て天下の母となす。
 既にその母を得て、またその子を知り、既
にその子を知り、またその母を守れば、身を
没するまで殆うからず。
 その兌(あな)を塞(ふさ)ぎ、その門を閉ざ
せば、身を終うるまで勤(つか)れず。
 その兌を開き、その事を済(な)せば、身を
終うるまで救われず、小を見るを明と言い、
柔を守るを強と言う。
 その光を用いて、その明に復帰すれば、身
の殃(わざわい)を遺すなし。
 これを常の習いと言う。


○ 老子の原文

 天下有始、以為天下母。
 既得其母、復知其子、既知其子、復守其母、
没身不殆。
 塞其兌、閉其門、終身不勤。
 開其兌、済其事、終身不救。
 見小曰明、守柔曰強。
 用其光、復帰其明、無遺身殃。
 是謂習常。

2013年7月10日水曜日

51.順序

○老子の原文を道具として解釈したもの

 新しく考え出されたものは検討され、形と
なり、役に立てられる。
 新しく考え出し検討することが重要だ。
 これらは自然を参考にしたものになる。
 だから自然の営みと同じような手順を経た
ものだけが残る。
 決して独占したり、押し付けたり、他のも
のを排除したりしない。
 これが最善の方法だ。


○老子の読み下し文

 道、これを生じ、徳、これを畜(やしな)い、
物、これを形づくり、勢、これを成す。
 ここを以て万物は道を尊びて徳を貴ばざる
はなし。
 道の尊きと徳の尊きは、これを命ずるなく
して、常に自然なり。
 故に、道はこれを生じ、徳はこれを畜い、
これを長じ、これを育て、これを亭(さだ)め、
これを毒(あつ)くし、これを養い、これを覆
う。
 生ずるも有とせず、なすも恃まず、長ずる
も宰たらず。
 これを玄徳と言う。


○老子の原文

 道生之、徳畜之、物形之、勢成之。
 是以万物莫不尊道事貴徳。
 道之尊、徳之貴、夫莫之命、常自然。
 故道生之、徳畜之、長之育之、亭之毒之、
養之覆之。
 生而不有、為而不恃、長而不宰。
 是謂玄徳。

2013年7月9日火曜日

50.死

○老子の原文を道具として解釈したもの

 生まれたものは死ぬ。
 寿命で死ぬもの、途中で死ぬもの、自分か
ら死ぬものがある。
 どうしてか。
 肉体的な死と精神的な死があるからだ。
 死を怖がらないものには、死を怖がるもの
は近づかない。
 どうしてか。
 肉体は死にやすく、精神は死を知っている
からだ。


○老子の読み下し文

 生を出でて死に入る。
 生の徒は十に三あり、死の徒も十に三あり、
人の生、動いて死地にゆくも、また十に三あ
り。
 それ何の故ぞ。
 その生を生とすることの厚きを以てなり。
 蓋(けだ)し聞く、善く生を摂する者は、陸
行して「ジ虎(こ)」に遇わず、軍に入りて甲
兵を被らず。
 「ジ」もその角を投ずる所なく、虎もその
爪を措(お)く所なく、兵もその刃を容るる所
なし。
 それ何の故ぞ。
 その死地なきを以てなり。


○老子の原文

 出生入死。
 生之徒十有三、死之徒十有三、人之生動之死地、
亦十有三。
 夫何故。
 以其生生之厚。
 蓋聞、善摂生者、陸行不遇ジ虎、入軍不被甲兵。
 ジ無所投其角、虎無所措其爪、兵無所容其刃。
 夫何故。
 以其無死地。

2013年7月8日月曜日

49.芯を持つ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人の心を読み取る。
 善にも悪にも得られる教訓はあり、善くす
ることができる。
 信じられる事にも疑わしい事にも得られる
情報があり、真実を知ることができる。
 まずは受け入れて、固定観念にとらわれな
い。
 周りに惑わされず、自分の答えに従う。


○老子の読み下し文

 聖人は常の心なく、百姓の心を以て心とな
す。
 善なる者は、吾れこれを善とし、不善なる
者も、吾れまたこれを善とすれば、徳は善な
り。
 信なる者は、吾れこれを信とし、不信なる
者も、吾れまたこれを信とすれば、徳は信な
り。
 聖人の天下に在るや、歙歙(きゅうきゅう)
として、天下のためにその心を渾(こん)にす。
 百姓は皆その耳目を注ぐも、聖人は皆これ
を孩(がい)にす。


○老子の原文

 聖人無常心、以百姓心為心。
 善者吾善之、不善者吾亦善之、徳善。
 信者吾信之、不信者吾亦信之、徳信。
 聖人在天下歙歙焉、為天下渾其心。
 百姓皆注其耳目。聖人皆孩之。

2013年7月7日日曜日

48.一芸

○老子の原文を道具として解釈したもの

 総合的なものより専門的なものがよい。
 一つのことを極めれば、考えなくても分か
るようになる。
 そうすれば、役に立つことができる。
 予定を詰め過ぎないことだ。
 予定に振回されることになる。


○老子の読み下し文

 学をなせば日々に益し、道をなせば日々に
損ず。
 これを損じて又損じ、以て無為に至る。
 無為にしてなさざるはなし。
 天下を取るは、常に事なきを以てす。
 その事あるに及びては、以て天下を取るに
足らず。


○老子の原文

 為学日益、為道日損。
 損之又損、以至於無為。
 無為而無不為。
 取天下、常以無事。
 及其有事、不足以取天下。

2013年7月6日土曜日

47.感性

○老子の原文を道具として解釈したもの

 生活に世の中のことは反映する。
 身体で季節を感じる。
 外からの情報は嘘を含んでいる。
 自分の感覚を磨くことが大切だ。


○老子の読み下し文

 戸を出でずして天下を知る。
 まどを窺(うかが)わずして天道を見る。
 その出ずること弥(いよいよ)遠ければ、そ
の知ること弥少なし。
 ここを以て聖人は、行かずして知り、見ず
してあきらかにし、なさずして成る。


○老子の原文

 不出戸知天下。
 不窺マド見天道。
 其出弥遠、其知弥少。
 是以聖人不行而知、不見而名、不為而成。

2013年7月5日金曜日

46.失敗の備え

○老子の原文を道具として解釈したもの

 平和なときに災いの準備をする。
 災いが起こったときに、準備が生きる。
 失うモノは持ちモノより多くはならず、災
難は持ちモノがなければ影響なく、失敗は得
たモノを失うだけだ。
 何が起きても失望しないことだ。


○老子の読み下し文

 天下に道あれば、走馬を却(しりぞ)けて以
て糞(つちか)う。
 天下に道なければ、戎馬(じゅうば)郊に生
ず。
 罪は可欲より大なるはなく、禍は足るを知
らざるより大なるはなく、咎は得るを欲する
より大なるはなし。
 故に足るを知るの足るは、常に足る。


○老子の原文

 天下有道、却走馬以糞。
 天下無道、戎馬生於郊。
 罪莫大於可欲、禍莫大於不知足、
咎莫大於欲得。
 故知足之足、常足矣。

2013年7月4日木曜日

45.見極める

○老子の原文を道具として解釈したもの

 成長してもすべてがそろっているわけでは
ないので、補助が必要だ。
 力は衰えるので、出しきってはいけない。
 立っていたら身を屈め、成功から欠陥を見
つけ、情報の中から除かれたものを探せ。
 音を聴きたければ静かにし、光を観たけれ
ば暗くする。
 じっとして目標を際立たせればいい。


○老子の読み下し文

 大成は欠くるが若く、その用は弊(やぶ)れ
ず。
 大盈(だいえい)は沖(むな)しきが若く、そ
の用は窮(きわ)まらず。
 大直は屈するが若く、大巧は拙(つた)なき
が若く、大弁は訥(とつ)なるが若し。
 躁(そう)は寒に勝ち、静は熱に勝つ。
 清静は天下の正たり。


○老子の原文

 大成若欠、其用不弊。
 大盈若冲、其用不窮。
 大直若屈、大巧若拙、大弁若訥。
 躁勝寒、静勝熱。
 清静為天下正。

2013年7月3日水曜日

44.保持力

○老子の原文を道具として解釈したもの

 名前より身体のほうが先にある。
 身体より宝物のほうが価値がある。
 得るより失うほうが辛い。
 だから、身体は衰えるが名前は残り、宝は
失いやすいが身体は残る。
 限界を知れば批判されることはなく、あき
らめれば命まで失うことはない。
 これで継承することができるのだ。


○老子の読み下し文

 名と身と孰(いず)れが親しき。
 身と貨と孰れが多なる。
 得ると亡うと孰れが病(うれい)ある。
 故にはなはだ愛すれば必ず大いに費(つい)
え、多く蔵すれば必ず厚く亡う。
 足るを知れば辱しめられず、止まるを知れ
ば殆うからず。
 以て長久なるべし。


○老子の原文

 名与身孰親。
 身与貨孰多。
 得与亡孰病。
 是故甚愛必大費、多蔵必厚亡。
 知足不辱、知止不殆。
 可以長久。

2013年7月2日火曜日

43.女性

○老子の原文を道具として解釈したもの

 女性は男性を従わせる。
 女性は子供をお腹の中で育てられる。
 だから無防備でも平気でいられる。
 自ら生み出すものには勝てない。


○老子の読み下し文

 天下の至柔(しじゅう)は、天下の至堅(しけ
ん)を馳騁(ちてい)す。
 無有は、無間に入る。
 吾れここを以て、無為の益有ることを知る。
 不言の教、無為の益は、天下これに及ぶこ
と希なり。


○老子の原文

 天下之至柔、馳騁天下之至堅。
 無有入無間。
 吾是以知無為之有益。
 不言之教、無為之益、天下希及之。

2013年7月1日月曜日

42.二面性

○老子の原文を道具として解釈したもの

 一つの考えがあれば、賛否があり、新たな
発案が生まれる。
 発案されたものには善悪がある。
 善悪を調整してモノになる。
 人は孤立することや不便を嫌う。
 だが不便から新しいものが生まれ、新しい
ことをしようとすれば孤立する。
 物は不便なところに利益があり、利益を求
めだすと害になる。
 誰かが知っていることは、みんなが知るこ
とになる。
 知らないものを使うと災いがある。
 ただし、災いからも知ることができる。


○老子の読み下し文

 道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生
じ、三は万物を生ず。
 物は陰を負いて陽を抱く。
 沖気(ちゅうき)以て和となす。
 人の悪む所は、唯だ孤、寡、不穀なり。
 王公は以て称となす。
 故に物は或いはこれを損じて益(ま)し、或
いはこれを益して損ずる。
 人の教うる所は、我もまたこれを教えん。
 強梁(きょうりょう)なる者はその死を得ず。
 それまさに以て教えの父となさんとす。


○老子の原文

 道生一、一生二、二生三、三生万物。
 万物負陰而抱陽。
 冲気以為和。
 人之所悪、唯孤寡不穀。
 而王公以為称。
 故物或損之而益、或益之而損。
 人之所教、我亦教之。
 強梁者不得其死。
 吾将以為教父。