2013年6月30日日曜日

41.道理

○老子の原文を道具として解釈したもの

 道理が分かる者がいる。
 道理を考える者がいる。
 道理が理解できない者がいる。
 すぐに理解できれば、すでに広まっている。
 例えれば、
 明る過ぎると見えにくい。
 長い道は同じところにいるように感じる。
 平らなところでは小さな凸も見つかる。
 無欲になれば沢山あるように感じる。
 白いものは汚れが目立つ。
 高望みすれば不満が残る。
 しっかりしていると失敗しやすい。
 純粋過ぎると魔がさしやすい。
 大きいと形が分からない。
 願望が大きいと達成しづらい。
 音が大き過ぎると音の区別ができない。
 自然現象はいつ起きるか分からない。
 道理はどこにでもあるから分からず、区別
できない。
 ただ役に立ち、助けになるだけだ。


○老子の読み下し文

 上士は道を聞けば、勤めてこれを行う。
 中士は道を聞けば、存(あ)るがごとく、亡
きがごとし。
 下士は道を聞けば、大いにこれを笑う。
 笑わざれば、以て道となすに足らず。
 故に建言(けんげん)これあり、
 明道は昧(くら)きがごとし。
 進道は退くがごとし。
 夷道(いどう)は類なるがごとし。
 上徳は谷のごとし。
 太白は辱(じょく)なるがごとし。
 広徳は足らざるがごとし。
 建徳は偸(おこた)るがごとし。
 質真は渝(かわ)るがごとし。
 大方は隅(かど)なし。
 大器は晩成す。
 大音は希声なり。
 大象は形なし 。
 道は隠れて名なし。
 それただ道は善く貸し且つ成す。


○老子の原文

 上士聞道、勤而行之。
 中士聞道、若存若亡。
 下士聞道、大笑之。
 不笑、不足以為道。
 故建言有之、
 明道若昧。
 進道若退。
 夷道若類。
 上徳若谷。
 太白若辱。
 広徳若不足。
 建徳若偸。
 質真若渝。
 大方無隅。
 大器晩成。
 大音希声。
 大象無形。
 道隠無名。
 夫唯道善貸且成。

2013年6月29日土曜日

40.動かすきっかけ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 反発するものが行動の力になる。
 弱いものはどんなことにも利用されやすい。
 何事も目に見える事実により発動し、見え
ないところに真実はある。


○老子の読み下し文

 反る者は道の動なり。
 弱き者は道の用なり。
 天下の万物は有より生じ、有は無より生ず。


○老子の原文

 反者道之動。
 弱者道之用。
 天下万物生於有、有生於無。

2013年6月28日金曜日

39.目のつけ所

○老子の原文を道具として解釈したもの

 唯一の存在になったものがある。
 天は唯一、光明があり。
 地は唯一、陸をなしている。
 精神は唯一、人に宿る。
 谷は唯一、水をたたえる。
 生命は唯一、生み出している。
 唯一の存在になることで、尊ばれる。
 もとはといえば、天は陰り、地は動き、精
神は狂い、谷は乾き、生命は絶え、尊ぶもの
はなかった。
 混在した中から区別され、根底から積み上
げられた。
 だから優れたものは低俗から現れる。
 低俗を無視することはできない。
 優れたものからは得ることができない。
 完成されたものより、見捨てられたものに
目を向けよ。


○老子の読み下し文

 昔の一を得る者。
 天は一を得て以て清く、地は一を得て以て
寧(やす)く、神は一を得て以て霊に、谷は一
を得て以て盈ち、万物は一を得て以て生じ、
侯王は一を得て以て天下の貞となる。
 そのこれを致せば、天は以て清きことなく
ば、まさに裂けるを恐れんとし、地は以て寧
きことなくば、まさに発(うご)くを恐れんと
し、神は以て霊なることなくば、まさに歇(や)
むを恐れんとし、谷は以て盈つることなくば、
まさに竭(つ)くることを恐れんとし、万物は
以て生ずることなくば、まさに滅ぶを恐れん
とし、侯王は以て貴高なることなくば、まさ
に蹶(たお)るるを恐れんとす。
 故に貴きは賤(いや)しきを以て本(もと)と
なし、高きは下(ひく)きを以て基(もとい)と
なす。
 ここを以て侯王は自ら孤、寡(か)、不穀と
言う。
 これ賤しきを以て本となすに非ざるや、非
ざるか。
 故に数々(しばしば)の誉れを致せば、誉れ
なし。
 ろくろくとして玉の如きを欲せず、珞珞と
して石の如し。


○老子の原文

 昔之得一者。
 天得一以清、
 地得一以寧、
 神得一以霊、
 谷得一以盈、
 万物得一以生、
 侯王得一以為天下貞。
 其到之、
 天無以清、将恐裂、
 地無以寧、将恐発、
 神無以霊、将恐歇、
 谷無以盈、将恐竭、
 万物無以生、将恐滅、
 侯王無以貴高、将恐蹶。
 故貴以賤為本、高以下為基。
 是以侯王自謂孤寡不穀。
 此非以賤為本邪、非乎。
 故到数誉無誉。
 不欲ロクロク如玉、珞珞如石。

2013年6月27日木曜日

38.対人関係

○老子の原文を道具として解釈したもの

 親切過ぎると大きなお世話になる。
 だからほどほどがよい。
 下心があると疑い深くなる。
 だから親切が嘘になる。
 親切はとっさにする行為。
 下心は考えた行為。
 思いやりは気づいてする行為。
 奉仕は自分のやれることをする行為。
 しつけは人に強要する行為。
 親切にできないなら思いやる。
 思いやりができないなら奉仕をする。
 奉仕ができないならしつけをする。
 しつけもできないようならおしまいだ。
 考えなければできないようでは、知恵も役
に立たない。
 人と自分の感情を共にする。
 内面をみがき外見にこだわらない。
 見栄をはらず、素直になることだ。


○老子の読み下し文

 上徳は徳とせず、ここを以て徳あり。
 下徳は徳を失わざらんとして、ここを以て
徳なし。
 上徳は無為にして、以てなすとするなし。
 下徳はこれをなして、以てなすとするあり。
 上仁はこれをなして、以てなすとするなし。
 上義はこれをなして、以てなすとするあり。
 上礼はこれをなして、これに応ずる莫(な)
ければ、すなわち臂(ひじ)を攘(はら)ってこ
れにつく。
 故に道を失いて、後に徳あり。
 徳を失いて、後に仁あり。
 仁を失いて、後に義あり。
 義を失いて、後に礼あり。
 それ礼なる者は、忠信の薄きにして、乱の
首なり。
 前識なる者は、道の華にして、愚の始めな
り。
 ここを以て大丈夫は、その厚きに処りて、
その薄きに居らず。
 その実に処りて、その華に居らず。
 故に彼れを去(す)ててこれを取る。


○老子の原文

 上徳不徳、是以有徳。
 下徳不失徳、是以無徳。
 上徳無為、而無以為。
 下徳為之、而有以為。
 上仁為之、而無以為。
 上義為之、而有以為。
 上礼為之、而莫之応、則攘臂而ツ之。
 故失道而後徳。
 失徳而後仁。
 失仁而後義。
 失義而後礼。
 夫礼者忠信之簿、而乱之首。
 前識者道之華、而愚之始。
 是以大丈夫処其厚、不居其簿。
 処其実、不居其華。
 故去彼取此。

2013年6月26日水曜日

37.独占

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然がやれることは無限だ。
 人は自然を利用しているにすぎない。
 人の考えたものは自然の中にすでにある。
 自然はそれを独り占めにはしない。
 独り占めにしなければ、支持される。


○老子の読み下し文

 道は常に無為にして、しかもなさざるはな
し。
 侯王もし能くこれを守らば、万物はまさに
自ら化せんとす。
 化して作(な)らんと欲すれば、吾れまさに
これを鎮むるに無名の樸を以てせんとす。
 無名の樸は、それまさに無欲ならんとす。
 欲せずして以て静ならば、天下まさに自ら
定まらんとす。


○老子の原文

 道常無為、而無不為。
 侯王若能守之、万物将自化。
 化而欲作、吾将鎮之以無名之樸。
 無名之樸、夫亦将無欲。
 不欲以静、天下将自定。

2013年6月25日火曜日

36.加減

○老子の原文を道具として解釈したもの

 伸ばし過ぎると切れる。
 強過ぎると油断する。
 盛況になり過ぎると廃れる。
 与え過ぎると奪われる。
 欲は出さないことだ。
 ほどほどだから優れているのだ。
 魚は水から出ようとはしない。
 人は知恵や道具を使い過ぎてはいけない。


○老子の読み下し文

 まさにこれを歙(ちぢ)めんと欲すれば、必
ず固(しばら)くこれを張る。
 まさにこれを弱くせんと欲すれば、必ず固
くこれを強くする。
 まさにこれを廃せんと欲すれば、必ず固く
興こす。
 まさにこれを奪わんと欲すれば、必ず固く
これを与えよ。
 それを微明(びめい)と言う。
 柔弱は剛強に勝る。
 魚は淵より脱すべからず。
 国の利器は、以て人に示すべからず。


○老子の原文

 将欲歙之、必固張之。
 将欲弱之、必固強之。
 将欲廃之、必固興之。
 将欲奪之、必固与之。
 是謂微明。
 柔弱勝剛強。
 魚不可脱於淵。
 国之利器、不可以示人。

2013年6月24日月曜日

35.有欲

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然を手本にすれば安泰だ。
 楽しむこと食べることに人は集まる。
 ただし、過度にしてはいけない。
 見せ過ぎては見飽きる。
 聞き過ぎては聞き飽きる。
 ほどほどだから廃れないのだ。


○老子の読み下し文

 大象(だいしょう)を執(と)りて天下は往(ゆ)
き、往きて害あらず、安平大なり。
 楽と餌とは、過客も止まる。
 道の言に出ずるは、淡としてそれ味わいな
し。
 これを視るも見るに足らず。
 これを聴くも聞くに足らず。
 これを用いても既(つく)すべからず。


○老子の原文

 執大象天下往、往而不害、安平大。
 楽与餌過客止。
 道之出言、淡乎其無味。
 視之不足見。
 聴之不足聞。
 用之不可既。

2013年6月23日日曜日

34.受け身

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然に善悪の判断はない。
 どちらも生まれたもので区別しない。
 だからどれが良いとは言えない。
 どちらかに誘導しようともしない。
 関心さえない。
 いずれは両方から得ることができる。
 自分から行動しないほうがいい。
 そのほうが得るものがある。


○老子の読み下し文

 大道は氾(はん)として、それ左右すべし。
 万物はこれを恃(たの)みて生ずるも辞せず。
 功成るも名を有せず。
 万物を衣養するも、主とならず。
 常に無欲なれば、小と名づくべし。
 万物これに帰するも、主とならざれば、大
と名づくべし。
 ここを以て聖人は、終(つい)に自ら大とな
さず。
 故に能くその大を成す。


○老子の原文

 大道氾兮、其可左右。
 万物恃之而生而不辞、功成而不名有。
 衣養万物、而不為主。
 常無欲、可名於小。
 万物帰焉、而不為主、可名為大。
 是以聖人、終不自為大。
 故能成其大。

2013年6月22日土曜日

33.役目

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人の行動を知る。
 そうすれば自分のやるべきことが分かる。
 人のやらないことをする。
 そうすれば自分のほうが優る。
 優っていれば豊かにできる。
 周りを豊かにすれば幸福になる。
 自分の役割を守っていれば、重宝される。
 重宝された記憶は後世に伝えられる。


○老子の読み下し文

 人を知る者は智なり。
 自ら知る者は明なり。
 人に勝つ者は力有り。
 自ら勝つ者は強し。
 足るを知る者は富む。
 強いて行うものは志有り。
 その所を失わざる者は久し。
 死しても亡びざる者は寿(いのちなが)し。


○老子の原文

 知人者智。
 自知者明。
 勝人者有力。
 自勝者強。
 知足者富。
 強行者有志。
 不失其所者久。
 死自不亡者寿。

2013年6月21日金曜日

32.奇正

○老子の原文を道具として解釈したもの

 誰にも認識されないものがある。
 そのままでは使えない。
 だが認識される方法さえ見つければ、大き
な力となる。
 自然はその方法を利用し、雨を降らせる。
 人も動かすことができる。
 やがて知られるようになる。
 広く知られると力を失う。
 力を失う前に離れることだ。
 雨も川や海に流れて役目を終える。


○老子の読み下し文

 道は常に無名なり。
 樸は小なりといえども、天下に能(よ)く臣
とすることなし。
 侯王若(も)し能くこれを守らば、万物はま
さに自ら賓(ひん)せんとす。
 天地相合して、以て甘露を降(くだ)す。
 民はこれに令する莫(な)くして自ら均(ひと)
す。
 始めて制して名有り。
 名もまた既に有れば、それまたまさに止ま
るを知らんとす。
 止まるを知らば、殆うからざる所以なり。
 道の天下に在るを譬(たと)えれば、なお川
谷(せんこく)の江海(こうかい)に於(お)ける
がごとし。


○老子の原文

 道常無名。
 樸雖小、天下莫能臣也。
 侯王若能守之、万物将自賓。
 天地相合、以降甘露。
 民莫之令而自均。
 始制有名。
 名亦既有、夫亦将知止。
 知止所以不殆。
 譬道之在天下、猶川谷之於江海。

2013年6月20日木曜日

31.諸刃の刃

○老子の原文を道具として解釈したもの

 武器は緊急時に使う道具。
 扱いにくいものだ。
 普通の感情では使えない。
 人は普通、左手は補助にし、右手で道具を
使う。
 武器は補助する手で使うような道具。
 まれにしか使えない。
 運良く使えても、誰にも使っているところ
を見せられない。
 もし見られると破滅する。
 これが知られると、それと同じ災いが自分
にふりかかるからだ。
 普段から左手は使わず、右手だけを使うよ
うにする。
 左側に道具は置かず、右側に道具を置く。
 いつも普段と変わらないようにする。
 いざとなったら親しい者を裏切ることにな
るからだ。
 武器を使い終われば、何事もなかったよう
に振舞う。


○老子の読み下し文

 それ兵は不祥(ふしょう)の器なり。
 物或いはこれを悪(にく)む。
 故に有道者は処(お)らず。
 君子、居ればすなわち左を貴び、兵を用う
ればすなわち右を貴ぶ。
 兵は不祥の器にして、君子の器に非(あら)
ず。
 やむを得ずしてこれを用う。
 恬淡(てんたん)を上となし、勝ちても美と
せず。
 もしこれを美とする者あらば、それ人を殺
すを楽しむなり。
 これ人を殺すを楽しむ者は、すなわち以て
志を天下に得べからず。
 吉事は左を尚(たっと)び、凶事には右を尚
ぶ。
 偏将軍は左に居り、上将軍は右に居る。
 喪礼を以てこれに処るを言うなり。
 人を殺すこと衆(おお)ければ、悲哀を以て
これに泣(のぞ)む。
 戦い勝てば、喪礼を以てこれに処る。


○老子の原文

 夫兵者不祥之器。
 物或悪之。
 故有道者不処。
 君子居則貴左、用兵則貴右。
 兵者不祥之器、非君子之器。
 不得已而用之。
 恬淡為上、勝而不美。
 而美之者、是楽殺人。
 夫楽殺人者、則不可以得志於天下矣。
 吉事尚左、凶事尚右。
 偏将軍居左、上将軍居右。
 言以喪礼処之。
 殺人之衆、以悲哀泣之。
 戦勝以喪礼処之。

2013年6月19日水曜日

30.手に余るモノ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 世の中は、争っても治まらない。
 自然が治めているからだ。
 争えば災いが自分にふりかかる。
 自然に手に入るものだけでいい。
 余分には取らない。
 だから自慢するようなこともないし、恨ま
れることもない。
 今は強くてもやがて衰え、持ちきれなくな
る。
 すぐに手放すことになる。


○老子の読み下し文

 道を以て人主を佐(たす)け、兵を以て天下
を強(し)いず。
 その事は還(かえ)るを好む。
 師の処(お)る所は、荊棘(けいきょく)ここ
に生じ、大軍の後は必ず凶年あり。
 善くする者は果(か)つのみ。
 以て強いるを取らず。
 果ちて矜(ほこ)ることなく、果ちて伐(ほこ)
ることなく、果ちて驕(おご)ることなく、果
ちて已(や)むを得ずとし、果ちて強いること
なし。
 物は壮なればすなわち老い、これを不道と
言う。
 不道は早く已む。


○老子の原文

 以道佐人主者、不以兵強天下。
 其事好還。
 師之所処、荊棘生焉、大軍之後、必有凶年。
 善者果而已。
 不敢以取強。
 果而勿矜、果而勿伐、果而勿驕、
果而不得已、果而勿強。
 物壮則老、是謂不道。
 不道早已。

2013年6月18日火曜日

29.無駄な努力

○老子の原文を道具として解釈したもの

 世の中を手に入れることはできない。
 世の中は変化する器だ。
 もろくてつかみどころがない。
 世の中は矛盾だらけで、それらが一緒に存
在する。
 世の中からは避けるようにすることだ。


○老子の読み下し文

 まさに天下を取らんと欲してこれをなすは、
吾その得ざるを見るのみ。
 天下は神器、なすべからず。
 なす者はこれを敗り、執(と)る者はこれを
失う。
 故に物は、あるいは行き、あるいいは随い、
あるいは歔(きょ)し、あるいは吹き、あるい
は強く、あるいは羸(よわ)く、あるいは培(や
しな)い、あるいは堕つ。
 ここを以て聖人は、甚(じん)を去り、奢(しゃ)
を去り、泰(たい)を去る。


○老子の原文

 将欲取天下而為之、吾見其不得已。
 天下神器、不可為也。
 為者敗之、執者失之。
 故物或行或隨、或歔或吹、或強或羸、
或培或堕。
 是以聖人去甚、去奢、去泰。

2013年6月17日月曜日

28.窪みに宿る

○老子の原文を道具として解釈したもの

 基本は変えず、柔軟に対応する。
 そうすれば発展できる。
 生まれた時は弱々しいものだ。
 盛んなものより、すたれたものに目を向け
る。
 そうすれば絶えることはない。
 過去は懐かしいものだ。
 栄えても貧しさを忘れない。
 そうすれば逃げたりしない。
 利益は、なかったから得られたものだ。
 知恵は無理なく利用する。
 だから悩んだりしないのだ。


○老子の読み下し文

 その雄を知りて、その雌を守れば、天下の
谿(たに)となる。
 天下の谿となれば、常の徳は離れず。
 嬰児に復帰す。
 その白を知りて、その黒を守れば、天下の
式(のり)となる。
 天下の式となれば、常の徳はたがわず。
 無極に復帰す。
 その栄を知りて、その辱を守れば、天下の
谷となる。
 天下の谷となれば、常の徳はすなわち足り、
樸(ぼく)に復帰す。
 樸は散ずれば、すなわち器となる。
 聖人はこれを用いて、すなわち官の長とな
る。
 故に大制は割かず。


○老子の原文

 知其雄、守其雌、為天下谿。
 為天下谿、常徳不離。
 復帰於嬰児。
 知其白、守其黒、為天下式。
 為天下式、常徳不タガ。
 復帰於無極。
 知其栄、守其辱、為天下谷。
 為天下谷、常徳乃足、復帰於樸。
 樸散則為器。
 聖人用之、則為官長。
 故大制不割。

2013年6月16日日曜日

27.適材適所

○老子の原文を道具として解釈したもの

 業績はない。
 遺言はしない。
 遺産もない。
 だから何も盗まれることはない。
 跡を継ぐ者が、自由に行動できる。
 人の能力を知り、それを利用する。
 物の使い方を知り、それを利用する。
 特徴を知り、それを利用する。
 これを知る者が人を使い。
 知らない者が人に使われる。
 特徴を無視した使い方をするからうまくい
かない。
 適材適所を知ることだ。


○老子の読み下し文

 善く行くものは轍迹(てつせき)なし。
 善く言うものは瑕適(かてき)なし。
 善く数うるものは籌策(ちゅさく)を用いず。
 善く閉ざすものは、関鍵(かんけん)なくし
て開くべからず。
 善く結ぶものは、縄約(じょうやく)なくし
て解くべからず。
 ここを以て聖人は、常に善く人を救い、故
に人を棄てることなし。
 常に善く物を救い、故に物を棄てることな
し。
 これを明に襲(い)ると言う。
 故に善人は不善人の師なり。
 不善人は善人の資なり。
 その師を貴ばす、その資を愛せざれば、智
ありといえども大いに迷わん。
 これを要(よう)妙(みょう)と言う。


○老子の原文

 善行無轍迹。
 善言無瑕適。
 善數不用籌策。
 善閉無関鍵、而不可開。
 善結無縄約、而不可解。
 是以聖人、常善救人、故無棄人。
 常善救物、故無棄物。
 是謂襲明。
 故善人者、不善人之師。
 不善人者、善人之資。
 不貴其師、不愛其資、雖智大迷。
 是謂要妙。

2013年6月15日土曜日

26.隠れた本質

○老子の原文を道具として解釈したもの

 重いものは軽いものの下にあり、静かなも
のは騒がしいものに隠されている。
 だから先を急がず、慌てない。
 ささいな事もあまくみてはいけない。
 慎重にしなければ計画がくるい、静観しな
ければ目標を見失う。


○老子の読み下し文

 重きは軽きの根たり、静かなるは躁(さわ
が)しきの君たり。
 ここを以て君子は、終日行きて輜重(しちょ
う)を離れず、栄観有りといえども、燕処し
て超然たり。
 奈何(いかん)ぞ、万乗の主にして、身を
以て天下より軽しとするや。
 軽ければ則ち本を失い、躁しければ則ち君
を失う。


○老子の原文

 重為軽根、靜為躁君。
 是以君子、終日行、不離輜重、雖有栄観、
燕処超然。
 奈何万乗之主、而以身軽天下。
 軽則失本、躁則失君。

2013年6月14日金曜日

25.未知

○老子の原文を道具として解釈したもの

 最初から形の整ったものはない。
 そのままでは目立たず、影響もない。
 そこから新しいものが生まれる。
 手をくわえることで、形ができる。
 形が区別できるので名前もつけられる。
 名前があるから知られ、知られるから遠く
まで伝わり、その名前が定着する。
 自然は名前で区別され、人も名前で区別さ
れる。
 人は自然の一部にすぎない。
 人は地に住み、地は天に依存し、天は自然
の移り変わりに影響を受ける。


○老子の読み下し文

 物有り混成し、天地に先んじて生ず。
 寂(せき)たり寥(りょう)たり、独立して改
めず、周行して殆(つか)れず。
 以て天下の母となすべし。
 吾れその名を知らず、これに字(あざな)し
て道と言う。
 強(し)いてこれが名をなして大と言う。
 大なれば逝(ゆ)き、逝けば遠ざかり、遠ざ
かれば反(かえ)る。
 故に道は大、天も大、地も大、王もまた大
なり。
 域中に四大有りて、王はその一に居る。
 人は地に法(のっと)り、地は天に法り、天
は道に法り、道は自然に法る。


○老子の原文

 有物混成、先天地生。
 寂兮寥兮、独立而不改、周行而不殆。
 可以為天下之母。
 吾不知其名、字之曰道。
 強為之名曰大。
 大曰逝、逝曰遠、遠曰反。
 故道大、天大、地大、王亦大。
 域中有四大、而王居其一焉。
 人法地、地法天、天法道、道法自然。

2013年6月13日木曜日

24.過剰

○老子の原文を道具として解釈したもの

 計画性がなければ実現できない。
 手順をはぶくと先へは進めない。
 目立とうとするとかえって注目されない。
 自画自賛は受け入れられない。
 人気がでれば、後はすたれるだけ。
 ワンパターンでは長続きしない。
 目立たせて騒いで注目されてもそれは一時
的なもの。
 すぐに飽きられる。
 何の利益も得られない。


○老子の読み下し文

 企(つまだ)つ者は立たず。
 跨(また)ぐ者は行かず。
 自ら見わす者は明らかならず。
 自ら是とする者は彰われず。
 自ら伐る者は功無し。
 自ら矜る者は長からず。
 その道に在るや、余食贅行(よしぜいこう)
と言う。
 物これを悪む或(あ)り。
 故に有道者は処(お)らず。


○老子の原文

 企者不立。
 跨者不行。
 自見者不明。
 自是者不彰。
 自伐者無功。
 自矜者不長。
 其在道也、曰餘食贅行。
 物或悪之。
 故有道者不処。

2013年6月12日水曜日

23.流体力

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然は主張しない。
 災いは長続きしないものだ。
 災いが自然から生まれたものだからだ。
 自然ですら長続きさせられないのに、人な
らなおさらだ。
 自然に逆らわなければ、得るものもあるし、
失うものもある。
 人の流れに従っていれば、争いはない。
 来るものを拒まなければ、得ることができ
る。
 去るものを追わなければ、捨てることがで
きる。
 勝手な振る舞いは、不信をいだかせる。


○老子の読み下し文

 希言は自然なり。
 故に飄風(ひょうふう)は朝(あした)を終え
ず、驟雨(しゅうう)は日を終えず。
 孰(だれ)かこれをなすもの、天地なり。
 天地すら久しきこと能(あた)わず、しかる
に況(いわ)んや人に於いてをや。
 故に事に道に従う者は、道に同じ、徳なる
者は、徳に同じ、失なる者は、失に同ず。
 道に同ずる者には、道もまたこれを得るを
楽しむ。
 徳に同ずる者には、徳もまたこれを得るを
楽しむ。
 失に同ずる者には、失もまたこれを得るを
楽しむ。
 信足らざれば、信ぜられざること有り。


○老子の原文

 希言自然。
 故飄風不終朝、驟雨不終日。
 孰為此者、天地。
 天地尚不能久、而況於人乎。
 故従事於道者同於道、徳者同於徳、
失者同於失。
 同於道者、道亦楽得之。
 同於徳者、徳亦楽得之。
 同於失者、失亦楽得之。
 信不足焉、有不信焉。

2013年6月11日火曜日

22.自然体

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人生には苦難があり、障害があるから成長
できる。
 不満があるから満足を求め、古くなるから
新しくする。
 少なければ選べないが、多ければ迷う。
 基本的なことが大事なんだ。
 普通にしているから目立つ。
 普通に考えるから正しい。
 普通に努力しているから功績がある。
 普通に行動しているから慕われる。
 競争しないから争いもない。
 これは昔から変わらない。
 必ず自分の利益になる。


○老子の読み下し文

 曲なれば則ち全(まった)く、枉(おう)なれ
ば則ち直(ただ)し。
 窪(わ)なれば則ち盈ち、敝(へい)なれば則
ち新たなり。
 少なければ則ち得、多ければ則ち惑う。
 ここを以て聖人は一を抱きて天下の式(のり)
となる。
 自ら見(あら)わさず、故に明らかなり。
 自ら是(ぜ)とせず、故に彰(あら)わる。
 自ら伐(ほこ)らず、故に功有り。
 自ら矜(ほこ)らず、故に長し。
 それただ争わず、故に天下も能(よ)くこれ
と争うことなし。
 古の所謂(いわゆる)曲なれば則ち全しとは、
豈(あ)に虚言ならんや。
 誠に全くしてこれを帰す。


○老子の原文

 曲則全、枉則直。
 窪則盈、敝則新。
 少則得、多則惑。
 是以聖人抱一、為天下式。
 不自見故明。
 不自是故彰。
 不自伐故有功。
 不自矜故長。
 夫惟不争、故天下莫能与之争。
 古之所謂曲則全者、豈虚言哉。
 誠全而帰之。

2013年6月10日月曜日

21.跡継ぎ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 王位を継承するには時期がある。
 継承する時期はいつも同じではない。
 王位には与えかたがある。
 王位を与えたことは物で表す。
 それは滅多に手に入らない貴重な物。
 それを見れば王位を授かったと分かる物。
 それは代々伝えられ、人々を統率できる。
 人々を統率できるのは、王位の授けた時期
と人物を間違っていないからだ。


○老子の読み下し文

 孔徳の容は、ただ道にこれ従う。
 道の物たる、これ恍(こう)、これ惚(こつ)。
 惚たり恍たりその中に象有り。
 恍たり惚たり、その中に物有り。
 窈(よう)たり冥たり、その中に精有り。
 その精はなはだ真なり、その中に信有り。
 古より今に及ぶまで、その名は去らず、以
て衆甫(しゅうほ)を閲(す)ぶ。
 吾れ何を以てか衆甫の然(しか)るを知るや。
 これを以てなり。


○老子の原文

 孔德之容、惟道是従。
 道之為物、惟恍惟惚。
 惚兮恍兮、其中有象。
 恍兮惚兮、其中有物。
 窈兮冥兮、其中有精。
 其精甚眞、其中有信。
 自古及今、其名不去、以閲衆甫。
 吾何以知衆甫之然哉。
 以此。

2013年6月9日日曜日

20.判断材料

○老子の原文を道具として解釈したもの

 知識がなければ心配することさえできない。
 返事の区別もつかない。
 善悪も分からない。
 人が恐れることも平気になってしまう。
 目的も達成しない。
 周りの人は遊んでいるように見える。
 自分は楽しむこともできず、仲間に加わる
こともできない。
 周りの人は満足そうだが自分は物足りない。
 自分はただ流されているだけ。
 人々は流行にはしり、自分は置いてきぼり。
 人々には噂が広まるが、自分には伝わらな
い。
 方向も分からず、前に進むこともできない。
 人々は技術を身につけていくが、自分は進
歩がない。
 自分は自然に生かされているだけのようだ。


○老子の読み下し文

 学を絶てば憂い無し。
 唯(い)と阿(あ)と相去ること幾何(いくばく)
ぞ。
 善と悪と相去ること何若(いかん)。
 人の畏(おそ)るる所、畏れざるべからず。
 荒(こう)としてそれ未だ央(つ)きざるかな。
 衆人は熙熙(きき)として、太牢(たいろう)
を享(う)くるがごとく、春に台に登るがごと
し。
 我は独り泊(はく)としてそれ未だ兆(きざ)
さず、嬰児(えいじ)の未だ孩(わら)わざるが
ごとし。
 累累(るいるい)として帰する所無きがごと
し。
 衆人は皆余り有りて、我は独り遺(とぼ)し
きがごとし。
 我は愚人の心なるかな、沌沌(どんどん)た
り。
 俗人は昭昭(しょうしょう)たるも、我は独
り昏昏(こんこん)たり。
 俗人は察察(さつさつ)たるも、我は独り悶々
(もんもん)たり。
 澹(たん)としてそれ海のごとく、洸(こう)
として止まるなきがごとし。
 衆人は皆以(もち)うる有りて、我は独り頑
にして鄙(ひ)に似る。
 我は独り人に異(ことな)りて、食母(しょく
ぼ)を貴ぶ。


○老子の原文

 絶学無憂。
 唯之与阿、相去幾何。
 善之与悪、相去何若。
 人之所畏、不可不畏。
 荒兮其未央哉。
 衆人熙熙、如享太牢、如春登台。
 我独泊兮其未兆、如嬰児之未孩。
 累累兮若無所帰。
 衆人皆有余、而我独若遺。
 我愚人之心也哉。
 沌沌兮。
 俗人昭昭、我独昏昏。
 俗人察察、我独悶悶。
 澹兮其若海、洸兮若無止。
 衆人皆有以、而我独頑似鄙。
 我独異於人、而貴食母。

2013年6月8日土曜日

19.有効利用

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人を有効に利用すれば利益は増える。
 情に訴えれば、助けたくなる。
 役に立つことを認めれば、犯罪はなくなる。
 状況を見て、目標を決め、協力を求め、利
益を公平にすること。


○老子の読み下し文

 聖を絶ち智を棄つれば、民の利百倍す。
 仁を絶ち義を棄つれば、民は孝慈に復す。
 巧を絶ち利を棄つれば、盗賊有ることなし。
 この三者、以て文足らずとなす。
 故に属ぐ所あらしむ。
 素を見(あら)わし樸(ぼく)を抱き、私を少
なくし欲を寡(すくな)くす。


○老子の原文

 絶聖棄智、民利百倍。
 絶仁棄義、民復孝慈。
 絶巧棄利、盜賊無有。
 此三者、以為文不足。
 故令有所屬。
 見素抱樸、少私寡欲。

2013年6月7日金曜日

18.結果の本質

○老子の原文を道具として解釈したもの

 規則があるのはそれを守らないからだ。
 情報が多くなると嘘も増える。
 遺産があるから家族が争う。
 普通のことが目立つのは、政治が悪いから
だ。


○老子の読み下し文

 大道廃(すた)れて、仁義有り。
 智慧出でて、大偽有り。
 六親(りくしん)和せずして、孝慈有り。
 国家昏乱(こんらん)して、忠臣有り。


○老子の原文

 大道廃有仁義。
 智慧出有大偽。
 六親不和有孝慈。
 国家昏乱有忠臣。

2013年6月6日木曜日

17.愚鈍

○老子の原文を道具として解釈したもの

 一番いいのは、誰にも評価されないことだ。
 その次は、親しまれることだ。
 その次は、恐れられ、そしてバカにされる
ことだ。
 信用がないものは、信頼されない。
 バカなようでも、的確な判断をする。
 功績があり仕事を成し遂げても、人は自然
にそうなったと感じる。


○老子の読み下し文

 太上(だいじょう)は下これを知るのみ。
 その次は親しみてこれを誉む。
 その次はこれを畏(おそ)れ、その次はこれ
を侮(あなど)る。
 信足らざれば、すなわち信ぜられざる有り。
 悠(ゆう)として、それ言を貴ぶ。
 功成り事遂げて、百姓は皆我は自然なりと
言う。


○老子の原文

 太上下知有之。
 其次親而誉之。
 其次畏之、其次侮之。
 信不足焉、有不信焉。
 悠兮其貴言。
 功成事遂、百姓皆謂我自然。

2013年6月5日水曜日

16.静観

○老子の原文を道具として解釈したもの

 虚を利用する。
 それは静まりかえって、動じない。
 自然は生みだし、死を与える。
 それは絶えず続いている。
 虚は死んだように動じないことだ。
 動じないから動いているものが分かる。
 動いているから存在が分かる。
 存在があるから、区別できる。
 存在に気づかなければ、災いを招く。
 存在を知っていれば、あらかじめ準備がで
きる。
 準備ができていれば落ち着く。
 落ち着いているから、正しく指図できる。
 正しい指図をすることで、すべてを把握で
きる。
 把握すれば、すべてを一つにまとめること
ができる。
 まとまれば、争いはなくなる。
 だから、安心して生きられる。


○老子の読み下し文

 虚を致すこと極まる。
 静を守ること篤(あつ)し。
 万物は並び作(おこ)れども、吾れは以て復
(かえ)るを観る。
 それ物の芸芸(うんうん)たれども、おのお
のその根に復帰す。
 根に帰るを静と言う。
 これを命に復ると言う。
 命に復るを常と言う。
 常を知るを明と言う。
 常を知らざれば、妄作(もうさ)して凶なり。
 常を知れば容(い)る。
 容るればすなわち公なり。
 公なればすなわち王なり。
 王たればすなわち天なり。
 天なればすなわち道なり。
 道なればすなわち久し。
 身を没するまで殆(あや)うからず。


○老子の原文

 到虚極。
 守静篤。
 万物並作、吾以観復。
 夫物芸芸、各復帰其根。
 帰根曰静。
 是謂復命。
 復命曰常。
 知常曰明。
 不知常、妄作凶。
 知常容。
 容乃公。
 公乃王。
 王乃天。
 天乃道。
 道乃久。
 没身不殆。

2013年6月4日火曜日

15.無垢

○老子の原文を道具として解釈したもの

 道を極めた者は、理解されない。
 例えれば、
 氷った川を渡るように慎重。
 周りの敵を恐れるように用心深い。
 客のように礼儀正しい。
 氷が解けるように親しみ。
 木のように飾りけがない。
 谷のように何でも受け入れる。
 濁っているように、目立たない。
 濁っていてもその奥底は清らか。
 何もしていないようで、変化に対応してい
る。
 いつも決して満足しない。
 だから新しいことを見つけだす。


○老子の読み下し文

 古の善く道をなす者は、微妙玄通にして、
深きこと識るべからず。
 それただ識るべからず、故に強(し)いてこ
れが容をなす。
 豫(よ)として冬に川を渉(わた)るがごとし。
 猶(ゆう)として四隣(しりん)を畏(おそ)る
るがごとし。
 儼(げん)としてそれ客のごとし。
 渙(かん)として氷の将(まさ)に釈(と)けん
とするがごとし。
 孰(とん)としてそれ樸(ぼく)のごとし。
 曠(こう)としてそれ谷のごとし。
 混(こん)としてそれ濁れるがごとし。
 孰(だ)れか能(よ)く濁りて以てこれを静め
れば、徐(おもむ)ろに清し。
 孰れか能く安らかにして以てこれを動かし
て徐ろに生ぜん。
 この道を保つ者は、盈(み)つるを欲せず。
 それただ盈たず、故に能く敝(やぶ)れて新
たに成さず。


○老子の原文

 古之善為道者、微妙玄通、深不可識。
 夫唯不可識、故強為之容。
 豫兮若冬渉川。
 猶兮若畏四隣。
 儼兮其若客。
 渙兮若氷将釈。
 敦兮其若樸。
 曠兮其若谷。
 混兮其若濁。
 孰能濁以静之徐清。
 孰能安以動之徐生。
 保此道者、不欲盈。
 夫唯不盈、故能敝不新成。

2013年6月3日月曜日

14.無知無感

○老子の原文を道具として解釈したもの

 見えない光。
 聞こえない音。
 感触のない物。
 この三つは感じることができないので、同
じようなものだ。
 大きすぎても小さすぎても感じることがで
きない。
 区別ができないので名前のつけようがなく、
「無い」と思われている。
 感じることができなくても存在するものが
ある。
 幻のようなものだ。
 表も裏も区別ができない。
 それを発見し存在が分かるようになった。
 よく調べること。
 そうすれば進歩する。


○老子の読み下し文

 これを視れども見えず、これを名づけて夷
(い)と言う。
 これを聴けども聞こえず、これを名づけて
希と言う。
 これを搏(う)てども得ず、これを名づけて
微と言う。
 三者は致詰(ちきつ)すべからず、故に混じ
て一となす。
 その上は皦(あきら)かならず、その下は昧
(くら)からず。
 縄縄(じょうじょう)として名づくべからず、
無物に復帰す。これを無状の状、無物の象と
言う。
 これを惚恍(こうこつ)と言う。
 これを迎えてその首を見ず、これを随いて
その後を見ず。
 古(いにしえ)の道を執(と)りて、以て今の
有を御す。
 よく古始を知る。
 これを道紀と言う。


○老子の原文

 視之不見、名曰夷。
 聴之不聞、名曰希。
 搏之不得、名曰微。
 此三者不可致詰、故混而為一。
 其上不皦、其下不昧。
 縄縄不可名、復帰於無物。
 是謂無状之状、無物之象。
 是謂惚恍。
 迎之不見其首、随之不見其後。
 執古之道、以御今之有。
 能知古始。
 是謂道紀。

2013年6月2日日曜日

13.感情移入

○老子の原文を道具として解釈したもの

 ささいな変化も見逃さない。
 何かにつけ自分に起こったこととして考え
る。
 ささいな変化も見逃さないとは、うわさ程
度でもそこに人や世の中の変化が反映してい
るということ。
 だから見逃せないのだ。
 何かにつけ自分に起こったこととして考え
ると、自分におちどがないかを考えることが
できる。
 だからいざという時、心構えや準備ができ
てあわてない。
 世の中の変化を真っ先に気づく人が信頼さ
れる。
 世の中の出来事を自分の体に起こったこと
のように感じられる人に仕事を任せられる。


○老子の読み下し文

 寵辱(ちょうじょく)驚くがごとし。
 大患を貴ぶこと身のごとし。
 何をか寵辱驚くがごとしと言う。
 寵を下となすに、これを得ては驚くがごと
く、これを失いては驚くがごとし。
 これを寵辱驚くがごとしと言う。
 何をか大患を貴ぶこと身のごとしと言う。
 吾に大患有る所以(ゆえん)は、吾に身有る
がためなり。
 吾に身無きに及びては、吾に何の患(うれ)
い有らん。
 故に身を天下より貴べば、すなわち天下を
寄すべし。
 身を天下より愛すれば、すなわち天下をた
くすべし。


○老子の原文

 寵辱若驚。
 貴大患若身。
 何謂寵辱若驚。
 寵為下、得之若驚、失之若驚。
 是謂寵辱若驚。
 何謂貴大患若身。
 吾所以有大患者、為吾有身。
 及吾無身、吾有何患。
 故貴以身為天下、若可寄天下。
 愛以身為天下、若可托天下。

2013年6月1日土曜日

12.幻惑

○老子の原文を道具として解釈したもの

 色は目を惑わす。
 音は耳を惑わす。
 味は舌を惑わす。
 ギャンブルは人の心を惑わす。
 宝は、人の行動を惑わす。
 聖人は、質素な生活を心がける。
 だから、何にも惑わされることなく、本質
を見抜く。


○老子の読み下し文

 五色は人の目を盲(もう)ならしむ。
 五音は人の耳を聾(ろう)ならしむ。
 五味は人の口を爽(たが)わしむ。
 馳騁畋猟(ちていでんりょう)は、人の心を
発狂せしむ。
 得難きの貨は、人の行いを妨げしむ。
 ここを以て聖人は、腹をなして目をなさず。
 故に彼を去りて此れを取る。


○老子の原文

 五色令人目盲。
 五音令人耳聾。
 五味令人口爽。
 馳騁畋猟、令人心発狂。
 難得之貨、令人行妨。
 是以聖人、為腹不為目。
 故去彼取此。