2013年8月9日金曜日

【目次】

  はじめに
  1.認知  2.相反するもの  3.争いの素  4.無限のつながり  5.無分別
  6.無尽蔵  7.永く保つ秘けつ  8.水形  9.引き際  10.反省

  11.空間の利用  12.幻惑  13.感情移入  14.無知無感  15.無垢
  16.静観  17.愚鈍  18.結果の本質  19.有効利用  20.判断材料

  21.跡継ぎ  22.自然体  23.流体力  24.過剰  25.未知
  26.隠れた本質  27.適材適所  28.窪みに宿る  29.無駄な努力
  30.手に余るモノ  31.諸刃の刃  32.奇正  33.役目  34.受け身
  35.有欲  36.加減  37.独占  38.対人関係  39.目のつけ所
  40.動かすきっかけ  41.道理  42.二面性  43.女性  44.保持力
  45.見極める  46.失敗の備え  47.感性  48.一芸  49.芯を持つ

  50.死  51.順序  52.目標  53.苦楽  54.樹を観る  55.幼稚
  56.地味  57.簡易  58.放任  59.未完  60.察知  61.分析
  62.死生力  63.些細  64.違う視点  65.行動基準  66.指揮
  67.三つの貴重なモノ  68.間合い  69.即決  70.周知  71.知識

  72.個の集結  73.勇気  74.専門  75.生きる希望  76.変化
  77.隠遁  78.不惑  79.仲裁  80.自給自足  81.交渉

81.交渉

○老子の原文を道具として解釈したもの

 情報には悪い真実もあれば良い嘘もある。
 人には悪い無口もあれば良い多弁もある。
 悪い知恵もあれば良い無知もある。
 どちらも過信しないことだ。
 人に伝えたことが自分にかえってきたり、
人に教えたことで自分の知識が増えたりする。
 自然を知ることは利益になり、損はしない。
 人を知れば成長でき、災いを防ぐことがで
きる。


○老子の読み下し文

 信言は美ならず、美言は信ならず。
 善なる者は弁ぜず、弁ずる者は善ならず。
 知る者は博(ひろ)からず、博き者は知らず。
 聖人は積まず。
 既く以て人のためにして、己は愈々(いよい
よ)あり、既く以て人に与えて、己は愈々多し。
 天の道は、利してしかも害せず。
 聖人の道は、なしてしかも争わず。


○老子の原文

 信言不美、美言不信。
 善者不弁、弁者不善。
 知者不博、博者不知。
 聖人不積。
 既以為人、己愈有、既以与人、己愈多。
 天之道、利而不害。
 聖人之道、為而不争。
                  完

2013年8月8日木曜日

80.自給自足

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人が安心して集まる所は、広さに適した人
数がよく、争いになるような道具は使わない。
 そんな所なら、命をかけてまで他には行か
ないものだ。
 船や車には乗る機会がなく、武器も使う機
会がない。
 自分のできることは自分でする。
 そこにある食べ物を食べ、そこにある服を
着て、そこに住み、生活を楽しむ。
 すぐ近くに他人が住んでいても干渉はしな
い。


○老子の読み下し文

 小国寡民(かみん)、什伯(じゅうはく)の器
ありて用いることなからしむ。
 民をして死を重んじて遠く徒(うつ)らざら
しむ。
 舟輿(しゅうよ)ありといえども、これに乗
る所なく、甲兵ありといえども、これを陳(つ
ら)ぬる所なし。
 人をしてまた縄を結びてこれを用いる。
 その食を甘しとし、その服を美とし、その
居に安んじ、その俗を楽しましむ。
 隣国相望み、鶏犬の声相聞こえて、民老死
に至るまで、相往来せず。


○老子の原文

 小国寡民、使有什伯之器而不用。
 使民重死而不遠徒。
 雖有舟輿、無所乗之、雖有甲兵、無所陳之。
 使民復結縄而用之。
 甘其食、美其服、安其居、楽其俗。
 隣国相望、鶏犬之声相聞、民至老死、
不相往来。

2013年8月7日水曜日

79.仲裁

○老子の原文を道具として解釈したもの

 ケンカを仲裁すれば恨みをかう。
 どうすればよいか。
 それは、どちらかに味方し、片方を責めた
りしないこと。
 両方に距離を置くのが良く、どちらかを悪
者にしない。
 自然は親身にならず、すべてを良しとする。


○老子の読み下し文

 大怨(だいえん)を和するも、必ず余怨(よ
えん)あり。
 安(いず)くんぞ以て善となすべけんや。
 ここを以て聖人は左契(さけい)を執りて、
しかも責めず。
 徳あるものは、契を司り、徳なきものは、
徹を司る。
 天道は親なく、常に善人に与(くみ)す。


○老子の原文

 和大怨、必有余怨。
 安可以為善。
 是以聖人孰左契而不責於人。
 有得司契、無徳司徹。
 天道無親、常与善人。

2013年8月6日火曜日

78.不惑

○老子の原文を道具として解釈したもの

 水は不思議なモノだ。
 動じないモノでも動かすことができる。
 それはモノの弱いところにつけ込めるから
だ。
 弱いものが強いものに勝ち、柔らかいもの
が固いものを呑みこむのを見ることはあるが、
それを防げない。
 それを防ぐ方法は、侮辱をされても怒らず
動揺しない、災いがあっても事実を受けとめ、
周りを疑わないこと。
 情報に惑わされないことだ。


○老子の読み下し文

 天下に水より柔弱なるはなし。
 しかして堅強を攻むる者、これに能く勝る
なし。
 その以てこれを易(か)うるなきを以てなり。
 弱の強に勝ち、柔の剛に勝つは、天下知ら
ざるはなきも、能く行うなし。
 ここを以て聖人の言に、国の垢(あか)を受
くる、これを社稷(しゃしょく)の主と言い、
国の不祥を受くる、これを天下の王と言う。
 正言は反するが若(ごと)し。


○老子の原文

 天下莫柔弱於水。
 而攻堅強者、莫之能勝。
 以其無以易之。
 弱之勝強、柔之勝剛、天下莫不知、莫能行。
 是以聖人之言云、受国之垢、是謂社稷主、
受国之不祥、是謂天下王。
 正言若反。

2013年8月5日月曜日

77.隠遁

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然は弓に弦を張るのに似ている。
 弓は堅強にした中心を押さえ、柔弱な両端
を曲げて弦を張る。
 強いものは抑え、弱いものは自由にする。
 自然も同じで、強い生き物は少なく抑え、
弱い生き物は種類も量も多く盛んにする。
 人のやることは、足らないところをさらに
飢えさせ、余っているところを盛大にする。
 なぜそんなことになるのか。
 分かっている者は少ない。
 分かっている者は、所有するものは少なく、
仕事を成し遂げたら退く。
 高い地位にはいない。


○老子の読み下し文

 天の道は、それなお弓を張るがごとき。
 高き者はこれを抑え、下き者はこれを挙ぐ。
 余りある者はこれを損し、足らざる者はこ
れを補う。
 天の道は、余りあるを損して、足らざるを
補う。
 人の道は足らざるを損して、以て余りある
に奉ず。
 孰(だれ)かよく余りありて、以て天下に奉
ずるものぞ。
 ただ有道者のみ。
 ここを以て聖人は、なして恃(たの)まず、
功成りて処(お)らず。
 それ賢を見わすことを欲せず。


○老子の原文

 天之道、其猶張弓与。
 高者抑之、下者挙之。
 有余者損之、不足者補之。
 天之道、損有余而補不足。
 人之道則不然。
 損不足以奉有余。
 孰能有余以奉天下。
 唯有道者。
 是以聖人為而不恃、功成而不処。
 其不欲見賢。

2013年8月4日日曜日

76.変化

○老子の原文を道具として解釈したもの

 生きていれば動く、死ねば硬直する。
 木は生きている時は盛衰をくりかえし、死
んだ時は保たれる。
 だから凝り固まり保つだけでは滅ぶ。
 変化して盛衰することを受け入れれば発展
する。
 集団がどんなに優れていても退却すること
があり、巨木も落葉する。
 変化を拒むのは悪い考え方で、変化を受け
入れるのは良い考え方だ。


○老子の読み下し文

 人の生まるるや柔弱、その死するや堅強な
り。
 万物草木の生ずるや柔脆(じゅうぜい)、そ
の死するや枯槁(ここう)す。
 故に堅強なる者は死の徒なり。
 柔弱なる者は生の徒なり。
 ここを以て兵強ければ則ち勝たず。
 木強ければ則ち共(お)る。
 強大は下に処(お)り、柔弱は上に処る。


○老子の原文

 人之生也柔弱、其死也堅強。
 万物草木之生也柔脆、其死也枯槁。
 故堅強者死之徒。
 柔弱者生之徒。
 是以兵強則不勝。
 木強則共。
 強大処下、柔弱処上。

2013年8月3日土曜日

75.生きる希望

○老子の原文を道具として解釈したもの

 収穫がないのは育てるより多く採るからだ。
 だから飢える。
 混乱が起きるのは上下関係を決めるからだ。
 だから争う。
 死んでしまうのは欲望が叶わないからだ。
 だから絶望する。
 必要以上に得ようとしなければ辛くはなら
ない。


○老子の読み下し文

 民の餓(う)えるは、その上税を食むことの
多きを以てなり。
 ここを以て餓え。
 民の治め難きは、その上のなすあるを以て
なり。
 ここを以て治め難し。
 民の死を軽んずるは、その生を求むること
の厚きを以てなり。
 ここを以て死を軽んず。
 それただ生を持ってなすことなき者は、こ
れ生を貴ぶに賢(まさ)れり。


○老子の原文

 民之饑、以其上食税之多。
 是以饑。
 民之難治、以其上之有為。
 是以難治。
 民之軽死、以其求生之厚。
 是以軽死。
 夫唯無以生為者、是賢於貴生。

2013年8月2日金曜日

74.専門

○老子の原文を道具として解釈したもの

 死を恐れなければ殺すことをなんとも思わ
ない。
 普通は死を恐れるから、そのような者を捕
らえるのは難しいし、殺すこともできない。
 だから、それを殺すことを専門にする者が
いる。
 モノにはそれぞれの役割があり、違う仕事
には使えない。
 役割を間違えると、災いがふりかかる。


○老子の読み下し文

 民、死を畏(おそ)れざれば、いかんぞ死を
以てこれを懼(おそ)れしめん。
 民、死を畏れんとして、しかして奇をなす
者は、吾、執(とら)¥えてこれを殺すを得る
も、孰(だれ)か敢(あ)えてせん。
 常に殺を司る者ありて殺す。
 それ殺を司る者に代わりて殺すは、これ大
匠に代わりてきるなり。
 それ、大匠に代わりてきれば、その手を傷
つけざるものあること希なり。


○老子の原文

 民不畏死、奈何以死懼之。
 若使民常畏死、而為奇者、我得執而殺之、
孰敢。
 常有司殺者殺。
 不代司殺者殺、是代大匠キ。
 夫代大匠キ者、希有不傷其手矣。

2013年8月1日木曜日

73.勇気

○老子の原文を道具として解釈したもの

 勇気は災いにもなり、役立ちもする。
 利害を含んでいる。
 自然はどちらも受け入れている。
 利用するのは難しい。
 自然はモノを競争させて利益を得て、地形
を変動させ、モノを思い通りに集め、静まり
かえって力をためる。
 自然が育てた沢山のモノは、広い場所に散
らばっているが、一つも見捨てない。


○老子の読み下し文

 あえてするに勇なれば則ち殺し、あえてせ
ざるに勇なれば則ち活す。
 この両者は、或いは利或いは害。
 天の悪(にく)む所は、孰(だれ)かその故を
知らん。
 ここを以て聖人は、猶(な)おこれを難(かた)
しとす。
 天の道は、争わずして善く勝ち、言わずし
て善く応じ、召かずして自ら来り、せん然と
して善く謀る。
 天網(てんもう)は恢恢(かいかい)、疏(そ)
にして失わず。


○老子の原文

 勇於敢則殺、勇於不敢則活。
 此両者、或利或害。
 天之所悪、孰知其故。
 是以聖人猶難之。
 天之道、不争自善勝、不言自善応、
不召而自来、セン然而善謀。
 天網恢恢、疏而不失。

2013年7月31日水曜日

72.個の集結

○老子の原文を道具として解釈したもの

 集団の力を利用しなければ、どんな権力も
役に立たない。
 それには、集団を行動不自由にしないこと。
 個々の生活を邪魔しないこと。
 生活を邪魔しないから集団になる。
 個々の生活は違うのだから強制はしない。
 自由はあるが役割も与える。
 だから集団の力になるのだ。


○老子の読み下し文

 民、威を畏(おそ)れざれば、則ち大威至る。
 その居る所を狎(せば)むることなかれ。
 その生くる所を厭(おさ)えることなかれ。
 それただ厭えず、ここを以て厭(いと)わず。
 ここを以て聖人は、自ら知りて自ら見(あら
わ)さず。
 自ら愛して自ら貴しとせず。
 故に彼を去てて、これを取る。


○老子の原文

 民不畏威、則大威至。
 無狎其所居。
 無厭其所生。
 夫唯不厭、是以不厭。
 是以聖人自知不自見。
 自愛不自貴。
 故去彼取此。

2013年7月30日火曜日

71.知識

○老子の原文を道具として解釈したもの

 知っていることが全てとは言えない。
 だから分かっているとは言えない。
 知っていることを確かめて、はじめて分かっ
てくる。
 何でも分かるとは。
 それは、分かったことからまた新しいこと
を知ることができ、その積み重ねをすること
だ。


○老子の読み下し文

 知りて知らずとするは上なり。
 知らずして知るとするは病なり。
 それただ病を病とす、ここを以て病あらず。
 聖人は病あらず。
 その病を病とす、ここを以て病あらず。


○老子の原文

 知不知上。
 不知知病。
 不唯病病、是以不病。
 聖人不病。
 以其病病、是以不病。

2013年7月29日月曜日

70.周知

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然は隠さず見せ、隠さず実行している。
 だけどそれが見過ごされ、実行もされない。
 そこには誕生の秘密があり、成長の秘密が
ある。
 これが分からなければ自分のことも分から
ない。
 自分のことが分かれば尊ばれる。
 そんな人は普通にしていても、利益が入っ
てくる。


○老子の読み下し文

 吾が言は甚だ知り易く、甚だ行い易し。
 天下能く知るなく、能く行うもなし。
 言に宗あり、事に君あり。
 それただ知ることなし、ここを以て我を知
らず。
 我を知る者希にして、我に則る者貴(とぼ)
し。
 ここを以て聖人は褐(かつ)を被(き)て玉を
懐(いだ)く。


○老子の原文

 吾言甚易知、甚易行。
 天下莫能知、莫能行。
 言有宗、事有君。
 不唯無知、是以不我知。
 知我者希、則我者貴。
 是以聖人被褐懐玉。

2013年7月28日日曜日

69.即決

○老子の原文を道具として解釈したもの

 指示を出すときは傲慢にならず、ささいな
ことにも気を配る。そして、前進はゆっくり
と、後退は早く動かす。
 これは災いを未然に防ぎ、災いの芽を摘み、
被害を最小限にし、災いそのものをなくすた
めだ。
 災いは見過ごせば大きくなり、取り返しが
つかなくなる。
 だから、傷つくことは覚悟して、早く解決
するのだ。


○老子の読み下し文

 兵を用うるに言えることありて、吾、敢え
て主とならずして客となり、敢えて寸を進ま
ずして尺を退く。
 これを行くに行(みち)なく、攘(はら)うに
臂(ひじ)なく、執(と)るに兵なく、つくに敵
なしと言う。
 禍は敵を軽んずるより大なるはなく、敵を
軽んずれば、幾(ほとん)ど吾が宝を喪(うしな)
わん。
 故に兵を抗(あ)げて相加うるに、哀しむ者
勝つ。


○老子の原文

 用兵有言、吾不敢為主而為客、
不敢進寸而退尺。
 是謂行無行、攘無臂、執無兵、ツ無敵。
 禍莫大於軽敵。軽敵、幾喪吾宝。
 故抗兵相加、哀者勝矣。

2013年7月27日土曜日

68.間合い

○老子の原文を道具として解釈したもの

 指示するものは動かない。
 よく動くものは狙いをはずさない。
 生き残るものは同じことを繰り返さない。
 役に立つものは他の動きに合わせる。
 これで災いを防げ、力を発揮し、自由に行
動できる。
 昔から行われていることだ。


○老子の読み下し文

 善く士たる者は武ならず。
 善く戦うものは怒らず。
 善く敵に勝つものはともにせず。
 善く人を用うる者はこれが下となる。
 これを争わざるの徳と言い、これを人の力
を用うと言い、これを天に配すと言う。
 古えの極なり。


○老子の原文

 善為士者不武。
 善戦者不怒。
 善勝敵者不与。
 善用人者為天下。
 是謂不争之徳、是謂用人之力、是謂配天。
 古之極。

2013年7月26日金曜日

67.三つの貴重なモノ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 大き過ぎるものは認識できない。
 認識できないぐらい大きいのだ。
 認識できていたらすでに奪い合ってなくなっ
ている。
 それには三つの貴重なモノがあるからだ。
 一つは、育てる力。
 一つは、無駄をなくす力。
 一つは、退く力。
 育てるには勇気がいる。
 無駄がないから広まる。
 退くから継承できる。
 もし、育てず、無駄をし、退くこともなけ
れば滅ぶ。
 育てる力があればどんな困難にも立ち向か
え、守りとおせる。
 育てているものには誰も手出しができない。


○老子の読み下し文

 天下皆我が道を大にして不肖(ふしょう)に
似たりと言う。
 それただ大、故に不肖に似たり。
 もし肖(しょう)ならば、久しいかな、その
細たることや。
 我に三宝あり、持してこれを宝とす。
 一に、慈。
 二に、倹。
 三に、敢えて天下の先とならず。
 慈、故に能く勇なり。
 倹、故に能く広し。
 敢えて天下の先とならず、故に能く成器の
長たり。
 今、慈を舎(す)てて、まさに勇ならんとし、
倹を舎てて、まさに広からんとし、後を舎て
て、まさに先んぜんとすれば、死せん。
 それ慈は、以て戦えば則ち勝ち、以て守れ
ば則ち固し。
 天まさにこれを救わんとし、慈を以てこれ
を衛(まも)る。


○老子の原文

 天下皆謂我道大似不肖。
 夫唯大、故似不肖。
 若肖、久矣、其細也夫。
 我有三宝、持而宝之。
 一曰、慈。
 二曰、倹。
 三曰、不敢為天下先。
 慈故能勇。
 倹故能広。
 不敢為天下先、故能成器長。
 今舍慈且勇、舍倹且広、舍後且先、死矣。
 夫慈矣戦則勝、以守則固。
 天将救之、以慈衛之。

2013年7月25日木曜日

66.指揮

○老子の原文を道具として解釈したもの

 集団に指示しようとすれば、その集団の目
線に下りる。
 だからうまく行動させられる。
 指示は全体にいきわたるような分かりやす
い言葉を使う。
 集団から取り残されたものがいないか、よ
く確認する。
 そして集団と一体になって行動を共にする。
 だから集団は指示に従うのだ。
 そんな集団とは誰も争わない。


○老子の読み下し文

 江海の能く百谷の王たる所以の者は、その
能くこれに下るを以てなり。
 故に能く百谷の王なり。
 ここを以て、民に上たらんと欲すれば、必
ず言を以てこれに下る。
 民に先んぜんと欲すれば、必ず身を以てこ
れに後(おく)る。
 ここを以て聖人は、上に処(お)りて民重し
とせず、前に処りて民害とせず。
 ここを以て天下、推(お)すを楽しんで厭(い
と)わず。
 その争わざるを以て、故に天下能くこれと
争うなし。


○老子の原文

 江海所以能為百谷王者、以其善下之。
 故能為百谷王。
 是以欲上民、必以言下之。
 欲先民、必以身後之。
 是以聖人処上而民不重、処前而民不害。
 是以天下楽推而不厭。
 以其不争、故天下莫能与之争。

2013年7月24日水曜日

65.行動基準

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人を手本にはしない。
 人からは影響を受けない。
 人の情報に左右されると混乱する。
 だから、人の情報だけで行動はできない。
 自分で確認して行動するほうがいい。
 情報と確認は切り離せない。
 これをふまえて行動する。
 行動は慎重に、よく見極めること。
 人とは違った行動になっても結果が悪いと
は限らない。


○老子の読み下し文

 古えの善く道をおさめし者は、以て民を明
にするにあらず。
 まさに以てこれを愚にせんとす。
 民の治め難きは、その智多きを以てなり。
 故に智を以て国を治むるは、国の賊。
 智を以て国を治めざるは、国の福。
 この両者を知るも、また稽式(けいしき)な
り。
 常に稽式を知る、これを玄徳と言う。
 玄徳は深いかな、遠いかな。
 物と反すれども、しかる後にすなわち大順
に至る。


○老子の原文

 古之善為道者、非以明民。
 将以愚之。
 民之難治、以其智多。
 故以智治国、国之賊。
 不以智治国、国之福。
 知此両者、亦稽式。
 常知稽式、是謂玄徳。
 玄徳深矣遠矣。
 与物反矣、然後及至大順。

2013年7月23日火曜日

64.違う視点

○老子の原文を道具として解釈したもの

 楽にしていれば持続し、変化を見せなけれ
ば企みがあり、動揺していれば別れ、ひっそ
りしていれば逃げていく。
 動きがないときに行動し、動き出したら止
まる。
 木は土の中から生長し、塔は平らな場所に
建ち、歩くときに両足は別れる。
 これに対応すればうまくいき、無理に行動
すれば失敗する。
 よく観察すること。
 無駄な行動はしないこと。
 普通は災いがひどくなって慌てる。
 後々どうなるかを考えれば、すぐに実行で
きる。
 そして、必要なことはするが、誘いにはの
らない。
 他とは違う視点で考え、度をこさないよう
にする。
 自然の流れにのって逆らわない。


○老子の読み下し文

 その安きは持し易く、そのいまだ兆さざる
は謀り易く、その脆(もろ)きは判(わか)ち易
く、その微なるは散らし易し。
 これをいまだあらざるになし、これをいま
だ乱れざるに治む。
 合抱(ごうほう)の木は、毫末(ごうまつ)に
生じ、九層の台は、累土(るいど)に起こり、
千里の行は、足下に始まる。
 なす者はこれを敗り、執(と)る者はこれを
失う。
 ここを以て聖人は、なすことなきが故に敗
るることなし。
 執ることなきが故に失うことなし。
 民の事に従うや、常に幾(ほと)んど成らん
とするにおいてこれを敗る。
 終りを慎むこと始めの如くんば、すなわち
事を敗ることなし。
 ここを以て聖人は、欲せざるを欲して、得
難きの貨を貴ばず。
 学ばざるを学んで、衆人の過(あやま)つ所
を復す。
 以て万物の自然を輔(たす)けて、あえてな
さず。


○老子の原文

 其安易持、其未兆易謀、其脆易判、
其微易散。
 為之於未有、治之於未乱。
 合抱之木、生於毫末、九層之台、起於累土、
千里之行、始於足下。
 為者敗之、執者失之。
 是以聖人無為故無敗。
 無執故無失。
 民之従事、常為幾成而敗之。
 慎終如始、則無敗事。
 是以聖人欲不欲、不貴難得之貨。
 学不学、復衆人之所過。
 以輔万物之自然、而不敢為。

2013年7月22日月曜日

63.些細

○老子の原文を道具として解釈したもの

 誰にも出来ないことをやり、正常な時に用
心し、利益にならないこともする。
 ささいなことは見落としがち、たいしたこ
とがないのは重大なこと、救いを求められれ
ば助ける。
 難しければ分担し、大きければ細かくする。
 難しいことは簡単なものからでき、大きい
ものは小さなものからできている。
 小さなことの積み重ねが大きなことになる。
 簡単なことは利益が少なく、楽になれば人
手が余る。
 だから誰もやろうとしないので、あえてや
るのだ。
 やれば無駄がなくなる。


○老子の読み下し文

 無為をなし、無事を事とし、無味を味わう。
 小を大とし少を多とし、怨みに報いるに徳
を以てす。
 難をその易に図り、大をその細になす。
 天下の難事は、必ず易より作(おこ)り、天
下の大事は、必ず細より作る。
 ここを以て聖人は終(つい)に大をなさず、
故に能くその大をなす。
 それ軽諾(けいだく)は必ず信すくなく、易
しとすること多ければ、必ず難きこと多し。
 ここを以て聖人は、なおこれを難しとす。
 故に終に難きことなし。


○老子の原文

 為無為、事無事、味無味。
 大小多少、報怨以徳。
 図難於其易。為大於其細。
 天下難事、必作於易、天下大事、必作於細。
 是以聖人終不為大、故能成其大。
 不軽諾必寡信、多易必多難。
 是以聖人猶難之。
 故終無難矣。

2013年7月21日日曜日

62.死生力

○老子の原文を道具として解釈したもの

 本当に大切なものは隠れている。
 それは誰もがほしがるものだ。
 上手い話や勇敢な行動は目立つ。
 悪い話や卑怯な行動だからといって見逃し
てはいけない。
 これは権力や財力、知力を使っても手に入
れることはできず、死生力が必要になる。
 死生力はどうすれば得られるのか。
 それは自然から学び、自然には悪いことも
含まれていることを知る。
 そうまでして手に入れたいものだ。


○老子の読み下し文

 道は万物の奥なり。
 善人の宝、不善人の保つ所なり。
 美言は以て尊を市(か)うべく、美行は以て
人に加わうべし。
 人の不善なる、何の棄つることか、これあ
らん。
 故に、天子を立て、三公を置くに、拱璧(こ
うへき)を以て駟馬(しば)に先だつありと
いえども、坐してこの道を進むるに如かず。
 古のこの道を貴ぶ所以(ゆえん)の者は何ぞ。
 求めて以て得られ、罪ありて以て免(まぬ
が)ると言わずや。
 故に天下の貴となる。


○老子の原文

 道者万物之奥。
 善人之宝、不善人之所保。
 美言可以市尊、美行可以加人。
 人之不善、何棄之有。
 故立天子、置三公、雖有拱璧以先駟馬、
不如坐進此道。
 古之所以貴此道者何。
 不曰求以得、有罪以免耶。
 故為天下貴。

2013年7月20日土曜日

61.分析

○老子の原文を道具として解釈したもの

 情報を集める者が主導権を握る。
 情報は混在している。
 そして、常に変化する。
 情報は分析される。
 分析すると答えが見つかる。
 多くの情報を細かく分ければ、ささいな違
いも見つけられる。
 その蓄積があれば少ない情報でも色々なこ
とが分かり判断できる。
 多くの情報から見つけ、少ない情報から判
断する。
 情報が多いと、いらないものを含み、情報
が少ないのは全体の中の一部だからだ。
 まずは多くの情報を集めることだ。


○老子の読み下し文

 大国は下流なり。
 天下の交なり。
 天下の牝(ひん)なり。
 牝は常に静を以て牡に勝つ。
 静を以て下ることをなす。
 故に、大国以て小国に下れば、則ち小国を
取る。
 小国以て大国に下れば、則ち大国に取らる。
 故に、或いは下りて以て取り、或いは下り
てしかして取らる。
 大国は人を兼ね畜(やしな)わんと欲するに
過ぎず、小国は入りて人に事(つか)えんと欲
するに過ぎず。
 それ両者、各々その欲するところを得んと
ならば、大いなる者よろしく下ることをなす
べし。


○老子の原文

 大国者下流。
 天下之交。
 天下之牝。
 牝常以静勝牡。
 以静為下。
 故大国以下小国、則取小国。
 小国以下大国、則取於大国。
 故或下以取、或下而取。
 大国不過欲兼畜人、小国不過欲入事人。
 不両者各得其所欲、大者宜為下。

2013年7月19日金曜日

60.察知

○老子の原文を道具として解釈したもの

 混乱は防がなければいけない。
 自然に逆らわなければ災いにならない。
 災いが起きてもそれを利用することさえで
きる。
 周りから不満も起きなくなる。
 だから混乱せず、利益さえ得られるのだ。


○老子の読み下し文

 大国を治むるは、小鮮を烹(に)るがごとし。
 道を以て天下に涖(のぞ)めば、その鬼、神
ならず。
 その鬼、神ならざるにあらず、その神、人
を傷(そこな)わず。
 その神、人を傷わざるにはあらず、聖人も
また人を傷わず。
 それ両(ふた)つながら相傷わず、故に徳、
交々(こもごも)帰す。


○老子の原文

 治大国、若烹小鮮。
 以道涖天下、其鬼不神。
 非其鬼不神、其神不傷人。
 非其神不傷人、聖人亦不傷人。
 夫両不相傷、故徳交帰焉。

2013年7月18日木曜日

59.未完

○老子の原文を道具として解釈したもの

 完璧を求めない。
 完璧ではないから反省できる。
 反省をかさねて新しい発想を身につける。
 新しい発想で他に差をつけることができる。
 他に差をつけると限りなく使われる。
 限りなく使われるから廃れることがない。
 完璧を求めなければ長く役に立つことにな
る。
 自然は完璧ではないから限りがないのだ。


○老子の読み下し文

 人を治め天に事(つか)うるは、嗇(しょ
く)に若(し)くはなし。
 それただ嗇、これを早く服すと言う。
 早く服する、これを重ねて徳を積むと言う。
 重ねて徳を積めば、則ち克(か)たざるなし。
 克たざるなければ、則ちその極を知るなし。
 その極を知るなければ、以て国を有(たも)
つべし。
 国を有つの母は、以て長久なるべし。
 これを深根固柢(しんこんこてい)、長生
久視(ちょうせいきゅうし)の道と言う。


○老子の原文

 治人事天、莫若嗇。
 夫唯嗇、是謂早服。
 早服、謂之重積徳。
 重積徳、則無夫克。
 無不克、則莫知其極。
 莫知其極、可以有国。
 有国之母、可以長久。
 是謂深根固柢、長生久視之道。

2013年7月17日水曜日

58.放任

○老子の原文を道具として解釈したもの

 困っていれば助けられる。
 警戒心が強くなれば失いやすい。
 災いから利益が生まれる。
 利益の中にも災いがある。
 どちらが良いとは言えない。
 正しいとも言えない。
 状況は常に変化する。
 戸惑うのが普通だ。
 だから、決めつけず、追いやらず、押し付
けず、明らかにしないこと。


○老子の読み下し文

 その政、悶々たれば、その民、淳々たり。
 その政、察々たれば、その民、欠々たり。
 禍か福の倚(よ)る所。
 福か禍の伏す所。
 孰(だれ)かその極を知らん。
 それ正なし。
 正また奇となり、善また妖となる。
 人の迷うや、その日もとより久し。
 ここを以て聖人は、方にして割かず、廉に
して刺さず、直にして肆(し)ならず、光あり
て燿(かがや)かさず。


○老子の原文

 其政悶悶、其民淳淳。
 其政察察、其民欠欠。
 禍兮福倚。
 福兮禍所伏。
 孰知其極。
 其無正。
 正復為奇、善復為妖。
 人之迷、其日固久。
 是以聖人方而不割、廉而不刺、直而不肆、
光而不燿。

2013年7月16日火曜日

57.簡易

○老子の原文を道具として解釈したもの

 周りに理解されて存在し、他にないから使
われて役に立ち、やがて広まる。
 これが自然の流れだ。
 利益を独占すると発展しなくなる。
 使い方が理解できないモノは混乱する。
 手に入れにくいモノは真似され、悪いモノ
が増える。
 伝えることが多くなれば間違えも多くなる。
 だから、欲張らなければ新たなモノが生ま
れ、単純にすれば分かりやすく、行き渡るよ
うにすれば喜ばれ、要点だけ分かれば工夫す
る。


○老子の読み下し文

 正を以て国を治め、奇を以て兵を用い、無
事を以て天下を取る。
 吾何を以てその然るを知るや、ここを以て
す。
 天下に忌諱(きい)多くして、民いよいよ貧
し。
 民に利器多くして、国家ますます昏(くら)
し。
 人に技巧多くして、奇物ますます起こる。
 法令ますます彰かにして、盗賊多くあり。
 故に聖人は言う。
 我無為にして民自ら化し、我静を好みて民
自ら正しく、我無事にして民自ら富み、我無
欲にして民自ら樸なり。


○老子の原文

 以正治国、以奇用兵、以無事取天下。
 吾何以知其然哉、以此。
 天下多忌諱、而民弥貧。
 民多利器、国家滋昏。
 人多伎巧、奇物滋起。
 法令滋彰、盜賊多有。
 故聖人云。
 我無為而民自化、我好静而民自正、
我無事而民自富、我無欲而民樸。

2013年7月15日月曜日

56.地味

○老子の原文を道具として解釈したもの

 知恵があれば態度で示し、知恵がなければ
言い訳する。
 すべての情報を閉ざし、危険を避け、争い
を防ぎ、身をひそめて目立つことはしない。
 これで他と同化できる。
 だから近くにいても分からない。
 そんなものからは利益は得られないし、盗
むこともできない。
 役に立つとは思えないし、害にもならない。
 だから信頼されるのだ。


○老子の読み下し文

 知る者は言わず、言う者は知らず。
 その兌(あな)を塞(ふさ)ぎ、その門を閉ざ
し、その鋭を挫(くじ)き、その紛を解き、そ
の光を和らげ、その塵(よご)れに同じくす。
 これを玄同と言う。
 故に、得て親しむべからず、得て疎(うとん)
ずべからず。
 得て利すべからず、得て害すべからず、得
て貴ぶべからず、得て賤しむべからず。
 故に天下の貴となる。


○老子の原文

 知者不言、言者不知。
 塞其兌、閉其門、挫其鋭、解其紛、和其光、
同其塵。
 是謂玄同。
 故不可得而親、不可得而疎。
 不可得而利、不可得而害。
 不可得而貴、不可得而賤。
 故為天下貴。

2013年7月14日日曜日

55.幼稚

○老子の原文を道具として解釈したもの

 生まれたては守られる。
 どんな生き物も自分の子孫は守ろうとする。
 生まれたばかりのときは、自然に身を任せ
る。
 だけど生きるための能力は備わっている。
 だから育てられる方法を知っている。
 その方法が生命力であり、精神力になる。
 生命力はどうすることもできないが、精神
力は鍛えられる。
 これらには寿命がある。
 どうすることもできない。
 無理をすれば失う。


○老子の読み下し文

 徳を含むことの厚きは、赤子に比す。
 蜂、タイ、キ蛇(だ)も螫(さ)さず、猛獣も
據(つか)まず、攫(かく)鳥(ちょう)も搏(う)
たず。
 骨弱くし筋柔らかくして握ること固し。
 いまだ牝牡(ひんぼ)の合を知らずして、さ
い作(た)つは、精の至りなり。
 終日ないて嗄(こえか)れざるは、和の至り
なり。
 和を知るを常と言い、常を知るを明と言う。
 生を益すを祥(わざわい)と言い、心気を使
うを強と言う。
 物は壮なれば、すなわち老ゆ。
 これを不道と言う。
 不道は早く已(や)む。


○老子の原文

 含徳之厚、比於赤子。
 蜂タイキ蛇不螫、猛獣不據、攫鳥不搏。
 骨弱筋柔而握固。
 未知牝牡之合而サイ作、精之至也。
 終日号而不嗄、和之至也。
 知和曰常、知常曰明、益生曰祥、心使気曰強。
 物壮則老。
 謂之不道。
 不道早已。

2013年7月13日土曜日

54.樹を観る

○老子の原文を道具として解釈したもの

 木の根が張っていれば倒れにくい。
 木の中に殖える能力があり、どこからでも
成長する。
 だから世話をしなくても絶えることがない。
 この力があれば耐えられる。
 この知恵があれば利益が得られる。
 これを継承できれば長続きする。
 これを守れば災いを防ぐことができる。
 これを広めれば争うことはない。
 これがそれぞれ実現できているかを調べる。
 そうすれば世の中のことが分かる。
 手本は身近にある。


○老子の読み下し文

 善く建つ者は抜けず。
 善く抱く者は脱(お)ちず。
 子孫以て祭祀して輟(や)まず。
 これを身に修むれば、その徳すなわち真な
り。
 これを家に修むれば、その徳すなわち余り。
 これを郷に修むれば、その徳すなわち長く。
 これを邦(くに)に修むれば、その徳すなわ
ち豊かなり。
 これを天下に修むれば、その徳すなわち普
(あまね)し。
 故に、身を以て身を観、家を以て家を観、
郷を以て郷を観、邦を以て邦を観、天下を以
て天下を観る。
 吾、何を以てか天下の然るを知るや。
 これを以てす。


○老子の原文

 善建者不抜。
 善抱者不脱。
 子孫以祭祀不輟。
 修之於身、其徳乃真。
 修之於家、其徳乃余。
 修之於郷、其徳乃長。
 修之於邦、其徳乃豊。
 修之於天下、其徳乃普。
 故以身観身、以家観家、以郷観郷、
以邦観邦、以天下観天下。
 吾何以知天下然哉。
 以此。

2013年7月12日金曜日

53.苦楽

○老子の原文を道具として解釈したもの

 目標を達成することは難しい。
 目標が簡単なことでも努力をしない。
 目先の楽なことにとらわれて、辛いことを
後回しにする。
 自分のことには関心をもち、利益を求め、
楽しみ、豊かになることを望む。
 これらは世の中の利益にならない。
 だから乱れている。


○老子の読み下し文

 我をして介然(かいぜん)として、知あらし
むれば、大道を行きて、ただ施(よこしま)な
るをこれ畏(おそ)れん。
 大道は甚(はなは)だ夷(たいら)かなるに、
民は径(こみち)を好む。
 朝は甚だ除(きよ)められ、田は甚だ蕪(あ)
れ、倉は甚だ虚しき。
 文綵(ぶんさい)を服し、利剣を帯び、飲食
に厭(あ)き、財貨余りあり。
 これを盗夸(とうこ)と言う。
 道に非ざるかな。


○老子の原文

 使我介然有知、行於大道、唯施是畏。
 大道甚夷、而民好径。
 朝甚除、田甚蕪、倉甚虚。
 服文綵、帯利剣、厭飲食、財貨有余。
 是謂盜夸。
 非道也哉。

2013年7月11日木曜日

52.目標

○老子の原文を道具として解釈したもの

 この世も生み出されたものだ。
 その存在を知り、後に伝え、それを発展さ
せ、また後に伝えていけば災いは防げる。
 この世の成り行きから外れなければ混乱は
ない。
 外れた行動をすれば災いがふりかかる。
 ささいな事を見落とさず臨機応変に行動す
る。
 災いになる前に対応すれば災いをなくすこ
とができる。
 日頃から情報を得ることだ。


○老子の読み下し文

 天下に始めあり、以て天下の母となす。
 既にその母を得て、またその子を知り、既
にその子を知り、またその母を守れば、身を
没するまで殆うからず。
 その兌(あな)を塞(ふさ)ぎ、その門を閉ざ
せば、身を終うるまで勤(つか)れず。
 その兌を開き、その事を済(な)せば、身を
終うるまで救われず、小を見るを明と言い、
柔を守るを強と言う。
 その光を用いて、その明に復帰すれば、身
の殃(わざわい)を遺すなし。
 これを常の習いと言う。


○ 老子の原文

 天下有始、以為天下母。
 既得其母、復知其子、既知其子、復守其母、
没身不殆。
 塞其兌、閉其門、終身不勤。
 開其兌、済其事、終身不救。
 見小曰明、守柔曰強。
 用其光、復帰其明、無遺身殃。
 是謂習常。

2013年7月10日水曜日

51.順序

○老子の原文を道具として解釈したもの

 新しく考え出されたものは検討され、形と
なり、役に立てられる。
 新しく考え出し検討することが重要だ。
 これらは自然を参考にしたものになる。
 だから自然の営みと同じような手順を経た
ものだけが残る。
 決して独占したり、押し付けたり、他のも
のを排除したりしない。
 これが最善の方法だ。


○老子の読み下し文

 道、これを生じ、徳、これを畜(やしな)い、
物、これを形づくり、勢、これを成す。
 ここを以て万物は道を尊びて徳を貴ばざる
はなし。
 道の尊きと徳の尊きは、これを命ずるなく
して、常に自然なり。
 故に、道はこれを生じ、徳はこれを畜い、
これを長じ、これを育て、これを亭(さだ)め、
これを毒(あつ)くし、これを養い、これを覆
う。
 生ずるも有とせず、なすも恃まず、長ずる
も宰たらず。
 これを玄徳と言う。


○老子の原文

 道生之、徳畜之、物形之、勢成之。
 是以万物莫不尊道事貴徳。
 道之尊、徳之貴、夫莫之命、常自然。
 故道生之、徳畜之、長之育之、亭之毒之、
養之覆之。
 生而不有、為而不恃、長而不宰。
 是謂玄徳。

2013年7月9日火曜日

50.死

○老子の原文を道具として解釈したもの

 生まれたものは死ぬ。
 寿命で死ぬもの、途中で死ぬもの、自分か
ら死ぬものがある。
 どうしてか。
 肉体的な死と精神的な死があるからだ。
 死を怖がらないものには、死を怖がるもの
は近づかない。
 どうしてか。
 肉体は死にやすく、精神は死を知っている
からだ。


○老子の読み下し文

 生を出でて死に入る。
 生の徒は十に三あり、死の徒も十に三あり、
人の生、動いて死地にゆくも、また十に三あ
り。
 それ何の故ぞ。
 その生を生とすることの厚きを以てなり。
 蓋(けだ)し聞く、善く生を摂する者は、陸
行して「ジ虎(こ)」に遇わず、軍に入りて甲
兵を被らず。
 「ジ」もその角を投ずる所なく、虎もその
爪を措(お)く所なく、兵もその刃を容るる所
なし。
 それ何の故ぞ。
 その死地なきを以てなり。


○老子の原文

 出生入死。
 生之徒十有三、死之徒十有三、人之生動之死地、
亦十有三。
 夫何故。
 以其生生之厚。
 蓋聞、善摂生者、陸行不遇ジ虎、入軍不被甲兵。
 ジ無所投其角、虎無所措其爪、兵無所容其刃。
 夫何故。
 以其無死地。

2013年7月8日月曜日

49.芯を持つ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人の心を読み取る。
 善にも悪にも得られる教訓はあり、善くす
ることができる。
 信じられる事にも疑わしい事にも得られる
情報があり、真実を知ることができる。
 まずは受け入れて、固定観念にとらわれな
い。
 周りに惑わされず、自分の答えに従う。


○老子の読み下し文

 聖人は常の心なく、百姓の心を以て心とな
す。
 善なる者は、吾れこれを善とし、不善なる
者も、吾れまたこれを善とすれば、徳は善な
り。
 信なる者は、吾れこれを信とし、不信なる
者も、吾れまたこれを信とすれば、徳は信な
り。
 聖人の天下に在るや、歙歙(きゅうきゅう)
として、天下のためにその心を渾(こん)にす。
 百姓は皆その耳目を注ぐも、聖人は皆これ
を孩(がい)にす。


○老子の原文

 聖人無常心、以百姓心為心。
 善者吾善之、不善者吾亦善之、徳善。
 信者吾信之、不信者吾亦信之、徳信。
 聖人在天下歙歙焉、為天下渾其心。
 百姓皆注其耳目。聖人皆孩之。

2013年7月7日日曜日

48.一芸

○老子の原文を道具として解釈したもの

 総合的なものより専門的なものがよい。
 一つのことを極めれば、考えなくても分か
るようになる。
 そうすれば、役に立つことができる。
 予定を詰め過ぎないことだ。
 予定に振回されることになる。


○老子の読み下し文

 学をなせば日々に益し、道をなせば日々に
損ず。
 これを損じて又損じ、以て無為に至る。
 無為にしてなさざるはなし。
 天下を取るは、常に事なきを以てす。
 その事あるに及びては、以て天下を取るに
足らず。


○老子の原文

 為学日益、為道日損。
 損之又損、以至於無為。
 無為而無不為。
 取天下、常以無事。
 及其有事、不足以取天下。

2013年7月6日土曜日

47.感性

○老子の原文を道具として解釈したもの

 生活に世の中のことは反映する。
 身体で季節を感じる。
 外からの情報は嘘を含んでいる。
 自分の感覚を磨くことが大切だ。


○老子の読み下し文

 戸を出でずして天下を知る。
 まどを窺(うかが)わずして天道を見る。
 その出ずること弥(いよいよ)遠ければ、そ
の知ること弥少なし。
 ここを以て聖人は、行かずして知り、見ず
してあきらかにし、なさずして成る。


○老子の原文

 不出戸知天下。
 不窺マド見天道。
 其出弥遠、其知弥少。
 是以聖人不行而知、不見而名、不為而成。

2013年7月5日金曜日

46.失敗の備え

○老子の原文を道具として解釈したもの

 平和なときに災いの準備をする。
 災いが起こったときに、準備が生きる。
 失うモノは持ちモノより多くはならず、災
難は持ちモノがなければ影響なく、失敗は得
たモノを失うだけだ。
 何が起きても失望しないことだ。


○老子の読み下し文

 天下に道あれば、走馬を却(しりぞ)けて以
て糞(つちか)う。
 天下に道なければ、戎馬(じゅうば)郊に生
ず。
 罪は可欲より大なるはなく、禍は足るを知
らざるより大なるはなく、咎は得るを欲する
より大なるはなし。
 故に足るを知るの足るは、常に足る。


○老子の原文

 天下有道、却走馬以糞。
 天下無道、戎馬生於郊。
 罪莫大於可欲、禍莫大於不知足、
咎莫大於欲得。
 故知足之足、常足矣。

2013年7月4日木曜日

45.見極める

○老子の原文を道具として解釈したもの

 成長してもすべてがそろっているわけでは
ないので、補助が必要だ。
 力は衰えるので、出しきってはいけない。
 立っていたら身を屈め、成功から欠陥を見
つけ、情報の中から除かれたものを探せ。
 音を聴きたければ静かにし、光を観たけれ
ば暗くする。
 じっとして目標を際立たせればいい。


○老子の読み下し文

 大成は欠くるが若く、その用は弊(やぶ)れ
ず。
 大盈(だいえい)は沖(むな)しきが若く、そ
の用は窮(きわ)まらず。
 大直は屈するが若く、大巧は拙(つた)なき
が若く、大弁は訥(とつ)なるが若し。
 躁(そう)は寒に勝ち、静は熱に勝つ。
 清静は天下の正たり。


○老子の原文

 大成若欠、其用不弊。
 大盈若冲、其用不窮。
 大直若屈、大巧若拙、大弁若訥。
 躁勝寒、静勝熱。
 清静為天下正。

2013年7月3日水曜日

44.保持力

○老子の原文を道具として解釈したもの

 名前より身体のほうが先にある。
 身体より宝物のほうが価値がある。
 得るより失うほうが辛い。
 だから、身体は衰えるが名前は残り、宝は
失いやすいが身体は残る。
 限界を知れば批判されることはなく、あき
らめれば命まで失うことはない。
 これで継承することができるのだ。


○老子の読み下し文

 名と身と孰(いず)れが親しき。
 身と貨と孰れが多なる。
 得ると亡うと孰れが病(うれい)ある。
 故にはなはだ愛すれば必ず大いに費(つい)
え、多く蔵すれば必ず厚く亡う。
 足るを知れば辱しめられず、止まるを知れ
ば殆うからず。
 以て長久なるべし。


○老子の原文

 名与身孰親。
 身与貨孰多。
 得与亡孰病。
 是故甚愛必大費、多蔵必厚亡。
 知足不辱、知止不殆。
 可以長久。

2013年7月2日火曜日

43.女性

○老子の原文を道具として解釈したもの

 女性は男性を従わせる。
 女性は子供をお腹の中で育てられる。
 だから無防備でも平気でいられる。
 自ら生み出すものには勝てない。


○老子の読み下し文

 天下の至柔(しじゅう)は、天下の至堅(しけ
ん)を馳騁(ちてい)す。
 無有は、無間に入る。
 吾れここを以て、無為の益有ることを知る。
 不言の教、無為の益は、天下これに及ぶこ
と希なり。


○老子の原文

 天下之至柔、馳騁天下之至堅。
 無有入無間。
 吾是以知無為之有益。
 不言之教、無為之益、天下希及之。

2013年7月1日月曜日

42.二面性

○老子の原文を道具として解釈したもの

 一つの考えがあれば、賛否があり、新たな
発案が生まれる。
 発案されたものには善悪がある。
 善悪を調整してモノになる。
 人は孤立することや不便を嫌う。
 だが不便から新しいものが生まれ、新しい
ことをしようとすれば孤立する。
 物は不便なところに利益があり、利益を求
めだすと害になる。
 誰かが知っていることは、みんなが知るこ
とになる。
 知らないものを使うと災いがある。
 ただし、災いからも知ることができる。


○老子の読み下し文

 道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生
じ、三は万物を生ず。
 物は陰を負いて陽を抱く。
 沖気(ちゅうき)以て和となす。
 人の悪む所は、唯だ孤、寡、不穀なり。
 王公は以て称となす。
 故に物は或いはこれを損じて益(ま)し、或
いはこれを益して損ずる。
 人の教うる所は、我もまたこれを教えん。
 強梁(きょうりょう)なる者はその死を得ず。
 それまさに以て教えの父となさんとす。


○老子の原文

 道生一、一生二、二生三、三生万物。
 万物負陰而抱陽。
 冲気以為和。
 人之所悪、唯孤寡不穀。
 而王公以為称。
 故物或損之而益、或益之而損。
 人之所教、我亦教之。
 強梁者不得其死。
 吾将以為教父。

2013年6月30日日曜日

41.道理

○老子の原文を道具として解釈したもの

 道理が分かる者がいる。
 道理を考える者がいる。
 道理が理解できない者がいる。
 すぐに理解できれば、すでに広まっている。
 例えれば、
 明る過ぎると見えにくい。
 長い道は同じところにいるように感じる。
 平らなところでは小さな凸も見つかる。
 無欲になれば沢山あるように感じる。
 白いものは汚れが目立つ。
 高望みすれば不満が残る。
 しっかりしていると失敗しやすい。
 純粋過ぎると魔がさしやすい。
 大きいと形が分からない。
 願望が大きいと達成しづらい。
 音が大き過ぎると音の区別ができない。
 自然現象はいつ起きるか分からない。
 道理はどこにでもあるから分からず、区別
できない。
 ただ役に立ち、助けになるだけだ。


○老子の読み下し文

 上士は道を聞けば、勤めてこれを行う。
 中士は道を聞けば、存(あ)るがごとく、亡
きがごとし。
 下士は道を聞けば、大いにこれを笑う。
 笑わざれば、以て道となすに足らず。
 故に建言(けんげん)これあり、
 明道は昧(くら)きがごとし。
 進道は退くがごとし。
 夷道(いどう)は類なるがごとし。
 上徳は谷のごとし。
 太白は辱(じょく)なるがごとし。
 広徳は足らざるがごとし。
 建徳は偸(おこた)るがごとし。
 質真は渝(かわ)るがごとし。
 大方は隅(かど)なし。
 大器は晩成す。
 大音は希声なり。
 大象は形なし 。
 道は隠れて名なし。
 それただ道は善く貸し且つ成す。


○老子の原文

 上士聞道、勤而行之。
 中士聞道、若存若亡。
 下士聞道、大笑之。
 不笑、不足以為道。
 故建言有之、
 明道若昧。
 進道若退。
 夷道若類。
 上徳若谷。
 太白若辱。
 広徳若不足。
 建徳若偸。
 質真若渝。
 大方無隅。
 大器晩成。
 大音希声。
 大象無形。
 道隠無名。
 夫唯道善貸且成。

2013年6月29日土曜日

40.動かすきっかけ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 反発するものが行動の力になる。
 弱いものはどんなことにも利用されやすい。
 何事も目に見える事実により発動し、見え
ないところに真実はある。


○老子の読み下し文

 反る者は道の動なり。
 弱き者は道の用なり。
 天下の万物は有より生じ、有は無より生ず。


○老子の原文

 反者道之動。
 弱者道之用。
 天下万物生於有、有生於無。

2013年6月28日金曜日

39.目のつけ所

○老子の原文を道具として解釈したもの

 唯一の存在になったものがある。
 天は唯一、光明があり。
 地は唯一、陸をなしている。
 精神は唯一、人に宿る。
 谷は唯一、水をたたえる。
 生命は唯一、生み出している。
 唯一の存在になることで、尊ばれる。
 もとはといえば、天は陰り、地は動き、精
神は狂い、谷は乾き、生命は絶え、尊ぶもの
はなかった。
 混在した中から区別され、根底から積み上
げられた。
 だから優れたものは低俗から現れる。
 低俗を無視することはできない。
 優れたものからは得ることができない。
 完成されたものより、見捨てられたものに
目を向けよ。


○老子の読み下し文

 昔の一を得る者。
 天は一を得て以て清く、地は一を得て以て
寧(やす)く、神は一を得て以て霊に、谷は一
を得て以て盈ち、万物は一を得て以て生じ、
侯王は一を得て以て天下の貞となる。
 そのこれを致せば、天は以て清きことなく
ば、まさに裂けるを恐れんとし、地は以て寧
きことなくば、まさに発(うご)くを恐れんと
し、神は以て霊なることなくば、まさに歇(や)
むを恐れんとし、谷は以て盈つることなくば、
まさに竭(つ)くることを恐れんとし、万物は
以て生ずることなくば、まさに滅ぶを恐れん
とし、侯王は以て貴高なることなくば、まさ
に蹶(たお)るるを恐れんとす。
 故に貴きは賤(いや)しきを以て本(もと)と
なし、高きは下(ひく)きを以て基(もとい)と
なす。
 ここを以て侯王は自ら孤、寡(か)、不穀と
言う。
 これ賤しきを以て本となすに非ざるや、非
ざるか。
 故に数々(しばしば)の誉れを致せば、誉れ
なし。
 ろくろくとして玉の如きを欲せず、珞珞と
して石の如し。


○老子の原文

 昔之得一者。
 天得一以清、
 地得一以寧、
 神得一以霊、
 谷得一以盈、
 万物得一以生、
 侯王得一以為天下貞。
 其到之、
 天無以清、将恐裂、
 地無以寧、将恐発、
 神無以霊、将恐歇、
 谷無以盈、将恐竭、
 万物無以生、将恐滅、
 侯王無以貴高、将恐蹶。
 故貴以賤為本、高以下為基。
 是以侯王自謂孤寡不穀。
 此非以賤為本邪、非乎。
 故到数誉無誉。
 不欲ロクロク如玉、珞珞如石。

2013年6月27日木曜日

38.対人関係

○老子の原文を道具として解釈したもの

 親切過ぎると大きなお世話になる。
 だからほどほどがよい。
 下心があると疑い深くなる。
 だから親切が嘘になる。
 親切はとっさにする行為。
 下心は考えた行為。
 思いやりは気づいてする行為。
 奉仕は自分のやれることをする行為。
 しつけは人に強要する行為。
 親切にできないなら思いやる。
 思いやりができないなら奉仕をする。
 奉仕ができないならしつけをする。
 しつけもできないようならおしまいだ。
 考えなければできないようでは、知恵も役
に立たない。
 人と自分の感情を共にする。
 内面をみがき外見にこだわらない。
 見栄をはらず、素直になることだ。


○老子の読み下し文

 上徳は徳とせず、ここを以て徳あり。
 下徳は徳を失わざらんとして、ここを以て
徳なし。
 上徳は無為にして、以てなすとするなし。
 下徳はこれをなして、以てなすとするあり。
 上仁はこれをなして、以てなすとするなし。
 上義はこれをなして、以てなすとするあり。
 上礼はこれをなして、これに応ずる莫(な)
ければ、すなわち臂(ひじ)を攘(はら)ってこ
れにつく。
 故に道を失いて、後に徳あり。
 徳を失いて、後に仁あり。
 仁を失いて、後に義あり。
 義を失いて、後に礼あり。
 それ礼なる者は、忠信の薄きにして、乱の
首なり。
 前識なる者は、道の華にして、愚の始めな
り。
 ここを以て大丈夫は、その厚きに処りて、
その薄きに居らず。
 その実に処りて、その華に居らず。
 故に彼れを去(す)ててこれを取る。


○老子の原文

 上徳不徳、是以有徳。
 下徳不失徳、是以無徳。
 上徳無為、而無以為。
 下徳為之、而有以為。
 上仁為之、而無以為。
 上義為之、而有以為。
 上礼為之、而莫之応、則攘臂而ツ之。
 故失道而後徳。
 失徳而後仁。
 失仁而後義。
 失義而後礼。
 夫礼者忠信之簿、而乱之首。
 前識者道之華、而愚之始。
 是以大丈夫処其厚、不居其簿。
 処其実、不居其華。
 故去彼取此。

2013年6月26日水曜日

37.独占

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然がやれることは無限だ。
 人は自然を利用しているにすぎない。
 人の考えたものは自然の中にすでにある。
 自然はそれを独り占めにはしない。
 独り占めにしなければ、支持される。


○老子の読み下し文

 道は常に無為にして、しかもなさざるはな
し。
 侯王もし能くこれを守らば、万物はまさに
自ら化せんとす。
 化して作(な)らんと欲すれば、吾れまさに
これを鎮むるに無名の樸を以てせんとす。
 無名の樸は、それまさに無欲ならんとす。
 欲せずして以て静ならば、天下まさに自ら
定まらんとす。


○老子の原文

 道常無為、而無不為。
 侯王若能守之、万物将自化。
 化而欲作、吾将鎮之以無名之樸。
 無名之樸、夫亦将無欲。
 不欲以静、天下将自定。

2013年6月25日火曜日

36.加減

○老子の原文を道具として解釈したもの

 伸ばし過ぎると切れる。
 強過ぎると油断する。
 盛況になり過ぎると廃れる。
 与え過ぎると奪われる。
 欲は出さないことだ。
 ほどほどだから優れているのだ。
 魚は水から出ようとはしない。
 人は知恵や道具を使い過ぎてはいけない。


○老子の読み下し文

 まさにこれを歙(ちぢ)めんと欲すれば、必
ず固(しばら)くこれを張る。
 まさにこれを弱くせんと欲すれば、必ず固
くこれを強くする。
 まさにこれを廃せんと欲すれば、必ず固く
興こす。
 まさにこれを奪わんと欲すれば、必ず固く
これを与えよ。
 それを微明(びめい)と言う。
 柔弱は剛強に勝る。
 魚は淵より脱すべからず。
 国の利器は、以て人に示すべからず。


○老子の原文

 将欲歙之、必固張之。
 将欲弱之、必固強之。
 将欲廃之、必固興之。
 将欲奪之、必固与之。
 是謂微明。
 柔弱勝剛強。
 魚不可脱於淵。
 国之利器、不可以示人。

2013年6月24日月曜日

35.有欲

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然を手本にすれば安泰だ。
 楽しむこと食べることに人は集まる。
 ただし、過度にしてはいけない。
 見せ過ぎては見飽きる。
 聞き過ぎては聞き飽きる。
 ほどほどだから廃れないのだ。


○老子の読み下し文

 大象(だいしょう)を執(と)りて天下は往(ゆ)
き、往きて害あらず、安平大なり。
 楽と餌とは、過客も止まる。
 道の言に出ずるは、淡としてそれ味わいな
し。
 これを視るも見るに足らず。
 これを聴くも聞くに足らず。
 これを用いても既(つく)すべからず。


○老子の原文

 執大象天下往、往而不害、安平大。
 楽与餌過客止。
 道之出言、淡乎其無味。
 視之不足見。
 聴之不足聞。
 用之不可既。

2013年6月23日日曜日

34.受け身

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然に善悪の判断はない。
 どちらも生まれたもので区別しない。
 だからどれが良いとは言えない。
 どちらかに誘導しようともしない。
 関心さえない。
 いずれは両方から得ることができる。
 自分から行動しないほうがいい。
 そのほうが得るものがある。


○老子の読み下し文

 大道は氾(はん)として、それ左右すべし。
 万物はこれを恃(たの)みて生ずるも辞せず。
 功成るも名を有せず。
 万物を衣養するも、主とならず。
 常に無欲なれば、小と名づくべし。
 万物これに帰するも、主とならざれば、大
と名づくべし。
 ここを以て聖人は、終(つい)に自ら大とな
さず。
 故に能くその大を成す。


○老子の原文

 大道氾兮、其可左右。
 万物恃之而生而不辞、功成而不名有。
 衣養万物、而不為主。
 常無欲、可名於小。
 万物帰焉、而不為主、可名為大。
 是以聖人、終不自為大。
 故能成其大。

2013年6月22日土曜日

33.役目

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人の行動を知る。
 そうすれば自分のやるべきことが分かる。
 人のやらないことをする。
 そうすれば自分のほうが優る。
 優っていれば豊かにできる。
 周りを豊かにすれば幸福になる。
 自分の役割を守っていれば、重宝される。
 重宝された記憶は後世に伝えられる。


○老子の読み下し文

 人を知る者は智なり。
 自ら知る者は明なり。
 人に勝つ者は力有り。
 自ら勝つ者は強し。
 足るを知る者は富む。
 強いて行うものは志有り。
 その所を失わざる者は久し。
 死しても亡びざる者は寿(いのちなが)し。


○老子の原文

 知人者智。
 自知者明。
 勝人者有力。
 自勝者強。
 知足者富。
 強行者有志。
 不失其所者久。
 死自不亡者寿。

2013年6月21日金曜日

32.奇正

○老子の原文を道具として解釈したもの

 誰にも認識されないものがある。
 そのままでは使えない。
 だが認識される方法さえ見つければ、大き
な力となる。
 自然はその方法を利用し、雨を降らせる。
 人も動かすことができる。
 やがて知られるようになる。
 広く知られると力を失う。
 力を失う前に離れることだ。
 雨も川や海に流れて役目を終える。


○老子の読み下し文

 道は常に無名なり。
 樸は小なりといえども、天下に能(よ)く臣
とすることなし。
 侯王若(も)し能くこれを守らば、万物はま
さに自ら賓(ひん)せんとす。
 天地相合して、以て甘露を降(くだ)す。
 民はこれに令する莫(な)くして自ら均(ひと)
す。
 始めて制して名有り。
 名もまた既に有れば、それまたまさに止ま
るを知らんとす。
 止まるを知らば、殆うからざる所以なり。
 道の天下に在るを譬(たと)えれば、なお川
谷(せんこく)の江海(こうかい)に於(お)ける
がごとし。


○老子の原文

 道常無名。
 樸雖小、天下莫能臣也。
 侯王若能守之、万物将自賓。
 天地相合、以降甘露。
 民莫之令而自均。
 始制有名。
 名亦既有、夫亦将知止。
 知止所以不殆。
 譬道之在天下、猶川谷之於江海。

2013年6月20日木曜日

31.諸刃の刃

○老子の原文を道具として解釈したもの

 武器は緊急時に使う道具。
 扱いにくいものだ。
 普通の感情では使えない。
 人は普通、左手は補助にし、右手で道具を
使う。
 武器は補助する手で使うような道具。
 まれにしか使えない。
 運良く使えても、誰にも使っているところ
を見せられない。
 もし見られると破滅する。
 これが知られると、それと同じ災いが自分
にふりかかるからだ。
 普段から左手は使わず、右手だけを使うよ
うにする。
 左側に道具は置かず、右側に道具を置く。
 いつも普段と変わらないようにする。
 いざとなったら親しい者を裏切ることにな
るからだ。
 武器を使い終われば、何事もなかったよう
に振舞う。


○老子の読み下し文

 それ兵は不祥(ふしょう)の器なり。
 物或いはこれを悪(にく)む。
 故に有道者は処(お)らず。
 君子、居ればすなわち左を貴び、兵を用う
ればすなわち右を貴ぶ。
 兵は不祥の器にして、君子の器に非(あら)
ず。
 やむを得ずしてこれを用う。
 恬淡(てんたん)を上となし、勝ちても美と
せず。
 もしこれを美とする者あらば、それ人を殺
すを楽しむなり。
 これ人を殺すを楽しむ者は、すなわち以て
志を天下に得べからず。
 吉事は左を尚(たっと)び、凶事には右を尚
ぶ。
 偏将軍は左に居り、上将軍は右に居る。
 喪礼を以てこれに処るを言うなり。
 人を殺すこと衆(おお)ければ、悲哀を以て
これに泣(のぞ)む。
 戦い勝てば、喪礼を以てこれに処る。


○老子の原文

 夫兵者不祥之器。
 物或悪之。
 故有道者不処。
 君子居則貴左、用兵則貴右。
 兵者不祥之器、非君子之器。
 不得已而用之。
 恬淡為上、勝而不美。
 而美之者、是楽殺人。
 夫楽殺人者、則不可以得志於天下矣。
 吉事尚左、凶事尚右。
 偏将軍居左、上将軍居右。
 言以喪礼処之。
 殺人之衆、以悲哀泣之。
 戦勝以喪礼処之。

2013年6月19日水曜日

30.手に余るモノ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 世の中は、争っても治まらない。
 自然が治めているからだ。
 争えば災いが自分にふりかかる。
 自然に手に入るものだけでいい。
 余分には取らない。
 だから自慢するようなこともないし、恨ま
れることもない。
 今は強くてもやがて衰え、持ちきれなくな
る。
 すぐに手放すことになる。


○老子の読み下し文

 道を以て人主を佐(たす)け、兵を以て天下
を強(し)いず。
 その事は還(かえ)るを好む。
 師の処(お)る所は、荊棘(けいきょく)ここ
に生じ、大軍の後は必ず凶年あり。
 善くする者は果(か)つのみ。
 以て強いるを取らず。
 果ちて矜(ほこ)ることなく、果ちて伐(ほこ)
ることなく、果ちて驕(おご)ることなく、果
ちて已(や)むを得ずとし、果ちて強いること
なし。
 物は壮なればすなわち老い、これを不道と
言う。
 不道は早く已む。


○老子の原文

 以道佐人主者、不以兵強天下。
 其事好還。
 師之所処、荊棘生焉、大軍之後、必有凶年。
 善者果而已。
 不敢以取強。
 果而勿矜、果而勿伐、果而勿驕、
果而不得已、果而勿強。
 物壮則老、是謂不道。
 不道早已。

2013年6月18日火曜日

29.無駄な努力

○老子の原文を道具として解釈したもの

 世の中を手に入れることはできない。
 世の中は変化する器だ。
 もろくてつかみどころがない。
 世の中は矛盾だらけで、それらが一緒に存
在する。
 世の中からは避けるようにすることだ。


○老子の読み下し文

 まさに天下を取らんと欲してこれをなすは、
吾その得ざるを見るのみ。
 天下は神器、なすべからず。
 なす者はこれを敗り、執(と)る者はこれを
失う。
 故に物は、あるいは行き、あるいいは随い、
あるいは歔(きょ)し、あるいは吹き、あるい
は強く、あるいは羸(よわ)く、あるいは培(や
しな)い、あるいは堕つ。
 ここを以て聖人は、甚(じん)を去り、奢(しゃ)
を去り、泰(たい)を去る。


○老子の原文

 将欲取天下而為之、吾見其不得已。
 天下神器、不可為也。
 為者敗之、執者失之。
 故物或行或隨、或歔或吹、或強或羸、
或培或堕。
 是以聖人去甚、去奢、去泰。

2013年6月17日月曜日

28.窪みに宿る

○老子の原文を道具として解釈したもの

 基本は変えず、柔軟に対応する。
 そうすれば発展できる。
 生まれた時は弱々しいものだ。
 盛んなものより、すたれたものに目を向け
る。
 そうすれば絶えることはない。
 過去は懐かしいものだ。
 栄えても貧しさを忘れない。
 そうすれば逃げたりしない。
 利益は、なかったから得られたものだ。
 知恵は無理なく利用する。
 だから悩んだりしないのだ。


○老子の読み下し文

 その雄を知りて、その雌を守れば、天下の
谿(たに)となる。
 天下の谿となれば、常の徳は離れず。
 嬰児に復帰す。
 その白を知りて、その黒を守れば、天下の
式(のり)となる。
 天下の式となれば、常の徳はたがわず。
 無極に復帰す。
 その栄を知りて、その辱を守れば、天下の
谷となる。
 天下の谷となれば、常の徳はすなわち足り、
樸(ぼく)に復帰す。
 樸は散ずれば、すなわち器となる。
 聖人はこれを用いて、すなわち官の長とな
る。
 故に大制は割かず。


○老子の原文

 知其雄、守其雌、為天下谿。
 為天下谿、常徳不離。
 復帰於嬰児。
 知其白、守其黒、為天下式。
 為天下式、常徳不タガ。
 復帰於無極。
 知其栄、守其辱、為天下谷。
 為天下谷、常徳乃足、復帰於樸。
 樸散則為器。
 聖人用之、則為官長。
 故大制不割。

2013年6月16日日曜日

27.適材適所

○老子の原文を道具として解釈したもの

 業績はない。
 遺言はしない。
 遺産もない。
 だから何も盗まれることはない。
 跡を継ぐ者が、自由に行動できる。
 人の能力を知り、それを利用する。
 物の使い方を知り、それを利用する。
 特徴を知り、それを利用する。
 これを知る者が人を使い。
 知らない者が人に使われる。
 特徴を無視した使い方をするからうまくい
かない。
 適材適所を知ることだ。


○老子の読み下し文

 善く行くものは轍迹(てつせき)なし。
 善く言うものは瑕適(かてき)なし。
 善く数うるものは籌策(ちゅさく)を用いず。
 善く閉ざすものは、関鍵(かんけん)なくし
て開くべからず。
 善く結ぶものは、縄約(じょうやく)なくし
て解くべからず。
 ここを以て聖人は、常に善く人を救い、故
に人を棄てることなし。
 常に善く物を救い、故に物を棄てることな
し。
 これを明に襲(い)ると言う。
 故に善人は不善人の師なり。
 不善人は善人の資なり。
 その師を貴ばす、その資を愛せざれば、智
ありといえども大いに迷わん。
 これを要(よう)妙(みょう)と言う。


○老子の原文

 善行無轍迹。
 善言無瑕適。
 善數不用籌策。
 善閉無関鍵、而不可開。
 善結無縄約、而不可解。
 是以聖人、常善救人、故無棄人。
 常善救物、故無棄物。
 是謂襲明。
 故善人者、不善人之師。
 不善人者、善人之資。
 不貴其師、不愛其資、雖智大迷。
 是謂要妙。

2013年6月15日土曜日

26.隠れた本質

○老子の原文を道具として解釈したもの

 重いものは軽いものの下にあり、静かなも
のは騒がしいものに隠されている。
 だから先を急がず、慌てない。
 ささいな事もあまくみてはいけない。
 慎重にしなければ計画がくるい、静観しな
ければ目標を見失う。


○老子の読み下し文

 重きは軽きの根たり、静かなるは躁(さわ
が)しきの君たり。
 ここを以て君子は、終日行きて輜重(しちょ
う)を離れず、栄観有りといえども、燕処し
て超然たり。
 奈何(いかん)ぞ、万乗の主にして、身を
以て天下より軽しとするや。
 軽ければ則ち本を失い、躁しければ則ち君
を失う。


○老子の原文

 重為軽根、靜為躁君。
 是以君子、終日行、不離輜重、雖有栄観、
燕処超然。
 奈何万乗之主、而以身軽天下。
 軽則失本、躁則失君。

2013年6月14日金曜日

25.未知

○老子の原文を道具として解釈したもの

 最初から形の整ったものはない。
 そのままでは目立たず、影響もない。
 そこから新しいものが生まれる。
 手をくわえることで、形ができる。
 形が区別できるので名前もつけられる。
 名前があるから知られ、知られるから遠く
まで伝わり、その名前が定着する。
 自然は名前で区別され、人も名前で区別さ
れる。
 人は自然の一部にすぎない。
 人は地に住み、地は天に依存し、天は自然
の移り変わりに影響を受ける。


○老子の読み下し文

 物有り混成し、天地に先んじて生ず。
 寂(せき)たり寥(りょう)たり、独立して改
めず、周行して殆(つか)れず。
 以て天下の母となすべし。
 吾れその名を知らず、これに字(あざな)し
て道と言う。
 強(し)いてこれが名をなして大と言う。
 大なれば逝(ゆ)き、逝けば遠ざかり、遠ざ
かれば反(かえ)る。
 故に道は大、天も大、地も大、王もまた大
なり。
 域中に四大有りて、王はその一に居る。
 人は地に法(のっと)り、地は天に法り、天
は道に法り、道は自然に法る。


○老子の原文

 有物混成、先天地生。
 寂兮寥兮、独立而不改、周行而不殆。
 可以為天下之母。
 吾不知其名、字之曰道。
 強為之名曰大。
 大曰逝、逝曰遠、遠曰反。
 故道大、天大、地大、王亦大。
 域中有四大、而王居其一焉。
 人法地、地法天、天法道、道法自然。

2013年6月13日木曜日

24.過剰

○老子の原文を道具として解釈したもの

 計画性がなければ実現できない。
 手順をはぶくと先へは進めない。
 目立とうとするとかえって注目されない。
 自画自賛は受け入れられない。
 人気がでれば、後はすたれるだけ。
 ワンパターンでは長続きしない。
 目立たせて騒いで注目されてもそれは一時
的なもの。
 すぐに飽きられる。
 何の利益も得られない。


○老子の読み下し文

 企(つまだ)つ者は立たず。
 跨(また)ぐ者は行かず。
 自ら見わす者は明らかならず。
 自ら是とする者は彰われず。
 自ら伐る者は功無し。
 自ら矜る者は長からず。
 その道に在るや、余食贅行(よしぜいこう)
と言う。
 物これを悪む或(あ)り。
 故に有道者は処(お)らず。


○老子の原文

 企者不立。
 跨者不行。
 自見者不明。
 自是者不彰。
 自伐者無功。
 自矜者不長。
 其在道也、曰餘食贅行。
 物或悪之。
 故有道者不処。

2013年6月12日水曜日

23.流体力

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然は主張しない。
 災いは長続きしないものだ。
 災いが自然から生まれたものだからだ。
 自然ですら長続きさせられないのに、人な
らなおさらだ。
 自然に逆らわなければ、得るものもあるし、
失うものもある。
 人の流れに従っていれば、争いはない。
 来るものを拒まなければ、得ることができ
る。
 去るものを追わなければ、捨てることがで
きる。
 勝手な振る舞いは、不信をいだかせる。


○老子の読み下し文

 希言は自然なり。
 故に飄風(ひょうふう)は朝(あした)を終え
ず、驟雨(しゅうう)は日を終えず。
 孰(だれ)かこれをなすもの、天地なり。
 天地すら久しきこと能(あた)わず、しかる
に況(いわ)んや人に於いてをや。
 故に事に道に従う者は、道に同じ、徳なる
者は、徳に同じ、失なる者は、失に同ず。
 道に同ずる者には、道もまたこれを得るを
楽しむ。
 徳に同ずる者には、徳もまたこれを得るを
楽しむ。
 失に同ずる者には、失もまたこれを得るを
楽しむ。
 信足らざれば、信ぜられざること有り。


○老子の原文

 希言自然。
 故飄風不終朝、驟雨不終日。
 孰為此者、天地。
 天地尚不能久、而況於人乎。
 故従事於道者同於道、徳者同於徳、
失者同於失。
 同於道者、道亦楽得之。
 同於徳者、徳亦楽得之。
 同於失者、失亦楽得之。
 信不足焉、有不信焉。

2013年6月11日火曜日

22.自然体

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人生には苦難があり、障害があるから成長
できる。
 不満があるから満足を求め、古くなるから
新しくする。
 少なければ選べないが、多ければ迷う。
 基本的なことが大事なんだ。
 普通にしているから目立つ。
 普通に考えるから正しい。
 普通に努力しているから功績がある。
 普通に行動しているから慕われる。
 競争しないから争いもない。
 これは昔から変わらない。
 必ず自分の利益になる。


○老子の読み下し文

 曲なれば則ち全(まった)く、枉(おう)なれ
ば則ち直(ただ)し。
 窪(わ)なれば則ち盈ち、敝(へい)なれば則
ち新たなり。
 少なければ則ち得、多ければ則ち惑う。
 ここを以て聖人は一を抱きて天下の式(のり)
となる。
 自ら見(あら)わさず、故に明らかなり。
 自ら是(ぜ)とせず、故に彰(あら)わる。
 自ら伐(ほこ)らず、故に功有り。
 自ら矜(ほこ)らず、故に長し。
 それただ争わず、故に天下も能(よ)くこれ
と争うことなし。
 古の所謂(いわゆる)曲なれば則ち全しとは、
豈(あ)に虚言ならんや。
 誠に全くしてこれを帰す。


○老子の原文

 曲則全、枉則直。
 窪則盈、敝則新。
 少則得、多則惑。
 是以聖人抱一、為天下式。
 不自見故明。
 不自是故彰。
 不自伐故有功。
 不自矜故長。
 夫惟不争、故天下莫能与之争。
 古之所謂曲則全者、豈虚言哉。
 誠全而帰之。

2013年6月10日月曜日

21.跡継ぎ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 王位を継承するには時期がある。
 継承する時期はいつも同じではない。
 王位には与えかたがある。
 王位を与えたことは物で表す。
 それは滅多に手に入らない貴重な物。
 それを見れば王位を授かったと分かる物。
 それは代々伝えられ、人々を統率できる。
 人々を統率できるのは、王位の授けた時期
と人物を間違っていないからだ。


○老子の読み下し文

 孔徳の容は、ただ道にこれ従う。
 道の物たる、これ恍(こう)、これ惚(こつ)。
 惚たり恍たりその中に象有り。
 恍たり惚たり、その中に物有り。
 窈(よう)たり冥たり、その中に精有り。
 その精はなはだ真なり、その中に信有り。
 古より今に及ぶまで、その名は去らず、以
て衆甫(しゅうほ)を閲(す)ぶ。
 吾れ何を以てか衆甫の然(しか)るを知るや。
 これを以てなり。


○老子の原文

 孔德之容、惟道是従。
 道之為物、惟恍惟惚。
 惚兮恍兮、其中有象。
 恍兮惚兮、其中有物。
 窈兮冥兮、其中有精。
 其精甚眞、其中有信。
 自古及今、其名不去、以閲衆甫。
 吾何以知衆甫之然哉。
 以此。

2013年6月9日日曜日

20.判断材料

○老子の原文を道具として解釈したもの

 知識がなければ心配することさえできない。
 返事の区別もつかない。
 善悪も分からない。
 人が恐れることも平気になってしまう。
 目的も達成しない。
 周りの人は遊んでいるように見える。
 自分は楽しむこともできず、仲間に加わる
こともできない。
 周りの人は満足そうだが自分は物足りない。
 自分はただ流されているだけ。
 人々は流行にはしり、自分は置いてきぼり。
 人々には噂が広まるが、自分には伝わらな
い。
 方向も分からず、前に進むこともできない。
 人々は技術を身につけていくが、自分は進
歩がない。
 自分は自然に生かされているだけのようだ。


○老子の読み下し文

 学を絶てば憂い無し。
 唯(い)と阿(あ)と相去ること幾何(いくばく)
ぞ。
 善と悪と相去ること何若(いかん)。
 人の畏(おそ)るる所、畏れざるべからず。
 荒(こう)としてそれ未だ央(つ)きざるかな。
 衆人は熙熙(きき)として、太牢(たいろう)
を享(う)くるがごとく、春に台に登るがごと
し。
 我は独り泊(はく)としてそれ未だ兆(きざ)
さず、嬰児(えいじ)の未だ孩(わら)わざるが
ごとし。
 累累(るいるい)として帰する所無きがごと
し。
 衆人は皆余り有りて、我は独り遺(とぼ)し
きがごとし。
 我は愚人の心なるかな、沌沌(どんどん)た
り。
 俗人は昭昭(しょうしょう)たるも、我は独
り昏昏(こんこん)たり。
 俗人は察察(さつさつ)たるも、我は独り悶々
(もんもん)たり。
 澹(たん)としてそれ海のごとく、洸(こう)
として止まるなきがごとし。
 衆人は皆以(もち)うる有りて、我は独り頑
にして鄙(ひ)に似る。
 我は独り人に異(ことな)りて、食母(しょく
ぼ)を貴ぶ。


○老子の原文

 絶学無憂。
 唯之与阿、相去幾何。
 善之与悪、相去何若。
 人之所畏、不可不畏。
 荒兮其未央哉。
 衆人熙熙、如享太牢、如春登台。
 我独泊兮其未兆、如嬰児之未孩。
 累累兮若無所帰。
 衆人皆有余、而我独若遺。
 我愚人之心也哉。
 沌沌兮。
 俗人昭昭、我独昏昏。
 俗人察察、我独悶悶。
 澹兮其若海、洸兮若無止。
 衆人皆有以、而我独頑似鄙。
 我独異於人、而貴食母。

2013年6月8日土曜日

19.有効利用

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人を有効に利用すれば利益は増える。
 情に訴えれば、助けたくなる。
 役に立つことを認めれば、犯罪はなくなる。
 状況を見て、目標を決め、協力を求め、利
益を公平にすること。


○老子の読み下し文

 聖を絶ち智を棄つれば、民の利百倍す。
 仁を絶ち義を棄つれば、民は孝慈に復す。
 巧を絶ち利を棄つれば、盗賊有ることなし。
 この三者、以て文足らずとなす。
 故に属ぐ所あらしむ。
 素を見(あら)わし樸(ぼく)を抱き、私を少
なくし欲を寡(すくな)くす。


○老子の原文

 絶聖棄智、民利百倍。
 絶仁棄義、民復孝慈。
 絶巧棄利、盜賊無有。
 此三者、以為文不足。
 故令有所屬。
 見素抱樸、少私寡欲。

2013年6月7日金曜日

18.結果の本質

○老子の原文を道具として解釈したもの

 規則があるのはそれを守らないからだ。
 情報が多くなると嘘も増える。
 遺産があるから家族が争う。
 普通のことが目立つのは、政治が悪いから
だ。


○老子の読み下し文

 大道廃(すた)れて、仁義有り。
 智慧出でて、大偽有り。
 六親(りくしん)和せずして、孝慈有り。
 国家昏乱(こんらん)して、忠臣有り。


○老子の原文

 大道廃有仁義。
 智慧出有大偽。
 六親不和有孝慈。
 国家昏乱有忠臣。

2013年6月6日木曜日

17.愚鈍

○老子の原文を道具として解釈したもの

 一番いいのは、誰にも評価されないことだ。
 その次は、親しまれることだ。
 その次は、恐れられ、そしてバカにされる
ことだ。
 信用がないものは、信頼されない。
 バカなようでも、的確な判断をする。
 功績があり仕事を成し遂げても、人は自然
にそうなったと感じる。


○老子の読み下し文

 太上(だいじょう)は下これを知るのみ。
 その次は親しみてこれを誉む。
 その次はこれを畏(おそ)れ、その次はこれ
を侮(あなど)る。
 信足らざれば、すなわち信ぜられざる有り。
 悠(ゆう)として、それ言を貴ぶ。
 功成り事遂げて、百姓は皆我は自然なりと
言う。


○老子の原文

 太上下知有之。
 其次親而誉之。
 其次畏之、其次侮之。
 信不足焉、有不信焉。
 悠兮其貴言。
 功成事遂、百姓皆謂我自然。

2013年6月5日水曜日

16.静観

○老子の原文を道具として解釈したもの

 虚を利用する。
 それは静まりかえって、動じない。
 自然は生みだし、死を与える。
 それは絶えず続いている。
 虚は死んだように動じないことだ。
 動じないから動いているものが分かる。
 動いているから存在が分かる。
 存在があるから、区別できる。
 存在に気づかなければ、災いを招く。
 存在を知っていれば、あらかじめ準備がで
きる。
 準備ができていれば落ち着く。
 落ち着いているから、正しく指図できる。
 正しい指図をすることで、すべてを把握で
きる。
 把握すれば、すべてを一つにまとめること
ができる。
 まとまれば、争いはなくなる。
 だから、安心して生きられる。


○老子の読み下し文

 虚を致すこと極まる。
 静を守ること篤(あつ)し。
 万物は並び作(おこ)れども、吾れは以て復
(かえ)るを観る。
 それ物の芸芸(うんうん)たれども、おのお
のその根に復帰す。
 根に帰るを静と言う。
 これを命に復ると言う。
 命に復るを常と言う。
 常を知るを明と言う。
 常を知らざれば、妄作(もうさ)して凶なり。
 常を知れば容(い)る。
 容るればすなわち公なり。
 公なればすなわち王なり。
 王たればすなわち天なり。
 天なればすなわち道なり。
 道なればすなわち久し。
 身を没するまで殆(あや)うからず。


○老子の原文

 到虚極。
 守静篤。
 万物並作、吾以観復。
 夫物芸芸、各復帰其根。
 帰根曰静。
 是謂復命。
 復命曰常。
 知常曰明。
 不知常、妄作凶。
 知常容。
 容乃公。
 公乃王。
 王乃天。
 天乃道。
 道乃久。
 没身不殆。

2013年6月4日火曜日

15.無垢

○老子の原文を道具として解釈したもの

 道を極めた者は、理解されない。
 例えれば、
 氷った川を渡るように慎重。
 周りの敵を恐れるように用心深い。
 客のように礼儀正しい。
 氷が解けるように親しみ。
 木のように飾りけがない。
 谷のように何でも受け入れる。
 濁っているように、目立たない。
 濁っていてもその奥底は清らか。
 何もしていないようで、変化に対応してい
る。
 いつも決して満足しない。
 だから新しいことを見つけだす。


○老子の読み下し文

 古の善く道をなす者は、微妙玄通にして、
深きこと識るべからず。
 それただ識るべからず、故に強(し)いてこ
れが容をなす。
 豫(よ)として冬に川を渉(わた)るがごとし。
 猶(ゆう)として四隣(しりん)を畏(おそ)る
るがごとし。
 儼(げん)としてそれ客のごとし。
 渙(かん)として氷の将(まさ)に釈(と)けん
とするがごとし。
 孰(とん)としてそれ樸(ぼく)のごとし。
 曠(こう)としてそれ谷のごとし。
 混(こん)としてそれ濁れるがごとし。
 孰(だ)れか能(よ)く濁りて以てこれを静め
れば、徐(おもむ)ろに清し。
 孰れか能く安らかにして以てこれを動かし
て徐ろに生ぜん。
 この道を保つ者は、盈(み)つるを欲せず。
 それただ盈たず、故に能く敝(やぶ)れて新
たに成さず。


○老子の原文

 古之善為道者、微妙玄通、深不可識。
 夫唯不可識、故強為之容。
 豫兮若冬渉川。
 猶兮若畏四隣。
 儼兮其若客。
 渙兮若氷将釈。
 敦兮其若樸。
 曠兮其若谷。
 混兮其若濁。
 孰能濁以静之徐清。
 孰能安以動之徐生。
 保此道者、不欲盈。
 夫唯不盈、故能敝不新成。

2013年6月3日月曜日

14.無知無感

○老子の原文を道具として解釈したもの

 見えない光。
 聞こえない音。
 感触のない物。
 この三つは感じることができないので、同
じようなものだ。
 大きすぎても小さすぎても感じることがで
きない。
 区別ができないので名前のつけようがなく、
「無い」と思われている。
 感じることができなくても存在するものが
ある。
 幻のようなものだ。
 表も裏も区別ができない。
 それを発見し存在が分かるようになった。
 よく調べること。
 そうすれば進歩する。


○老子の読み下し文

 これを視れども見えず、これを名づけて夷
(い)と言う。
 これを聴けども聞こえず、これを名づけて
希と言う。
 これを搏(う)てども得ず、これを名づけて
微と言う。
 三者は致詰(ちきつ)すべからず、故に混じ
て一となす。
 その上は皦(あきら)かならず、その下は昧
(くら)からず。
 縄縄(じょうじょう)として名づくべからず、
無物に復帰す。これを無状の状、無物の象と
言う。
 これを惚恍(こうこつ)と言う。
 これを迎えてその首を見ず、これを随いて
その後を見ず。
 古(いにしえ)の道を執(と)りて、以て今の
有を御す。
 よく古始を知る。
 これを道紀と言う。


○老子の原文

 視之不見、名曰夷。
 聴之不聞、名曰希。
 搏之不得、名曰微。
 此三者不可致詰、故混而為一。
 其上不皦、其下不昧。
 縄縄不可名、復帰於無物。
 是謂無状之状、無物之象。
 是謂惚恍。
 迎之不見其首、随之不見其後。
 執古之道、以御今之有。
 能知古始。
 是謂道紀。

2013年6月2日日曜日

13.感情移入

○老子の原文を道具として解釈したもの

 ささいな変化も見逃さない。
 何かにつけ自分に起こったこととして考え
る。
 ささいな変化も見逃さないとは、うわさ程
度でもそこに人や世の中の変化が反映してい
るということ。
 だから見逃せないのだ。
 何かにつけ自分に起こったこととして考え
ると、自分におちどがないかを考えることが
できる。
 だからいざという時、心構えや準備ができ
てあわてない。
 世の中の変化を真っ先に気づく人が信頼さ
れる。
 世の中の出来事を自分の体に起こったこと
のように感じられる人に仕事を任せられる。


○老子の読み下し文

 寵辱(ちょうじょく)驚くがごとし。
 大患を貴ぶこと身のごとし。
 何をか寵辱驚くがごとしと言う。
 寵を下となすに、これを得ては驚くがごと
く、これを失いては驚くがごとし。
 これを寵辱驚くがごとしと言う。
 何をか大患を貴ぶこと身のごとしと言う。
 吾に大患有る所以(ゆえん)は、吾に身有る
がためなり。
 吾に身無きに及びては、吾に何の患(うれ)
い有らん。
 故に身を天下より貴べば、すなわち天下を
寄すべし。
 身を天下より愛すれば、すなわち天下をた
くすべし。


○老子の原文

 寵辱若驚。
 貴大患若身。
 何謂寵辱若驚。
 寵為下、得之若驚、失之若驚。
 是謂寵辱若驚。
 何謂貴大患若身。
 吾所以有大患者、為吾有身。
 及吾無身、吾有何患。
 故貴以身為天下、若可寄天下。
 愛以身為天下、若可托天下。

2013年6月1日土曜日

12.幻惑

○老子の原文を道具として解釈したもの

 色は目を惑わす。
 音は耳を惑わす。
 味は舌を惑わす。
 ギャンブルは人の心を惑わす。
 宝は、人の行動を惑わす。
 聖人は、質素な生活を心がける。
 だから、何にも惑わされることなく、本質
を見抜く。


○老子の読み下し文

 五色は人の目を盲(もう)ならしむ。
 五音は人の耳を聾(ろう)ならしむ。
 五味は人の口を爽(たが)わしむ。
 馳騁畋猟(ちていでんりょう)は、人の心を
発狂せしむ。
 得難きの貨は、人の行いを妨げしむ。
 ここを以て聖人は、腹をなして目をなさず。
 故に彼を去りて此れを取る。


○老子の原文

 五色令人目盲。
 五音令人耳聾。
 五味令人口爽。
 馳騁畋猟、令人心発狂。
 難得之貨、令人行妨。
 是以聖人、為腹不為目。
 故去彼取此。

2013年5月31日金曜日

11.空間の利用

○老子の原文を道具として解釈したもの

 馬車の車輪は、三十本の棒が同じ長さで円
(まる)い枠を支えている。だから何もない円
の中心に軸を取り付けられ安定して回転する。
 土をこねて器を作る。
 器にくぼみがあるから物が入れられる。
 洞穴を掘って部屋を作る。
 部屋に何もないから入れる。
 何もないことを利用すれば役に立つことも
ある。


○老子の読み下し文

 三十輻(ふく)、一轂(こく)を共にす。
 その無に当たりて、車の用有り。
 埴(つち)をこねて、器をつくる。
 その無なるに当たりて、器の用有り。
 こゆうを鑿(うが)ちて室をつくる。
 その無なるに当たりて、室の用有り。
 故に有の以て利をなすは、無の以て用をな
せばなり。


○老子の原文

 三十輻共一轂。
 当其無、有車之用。
 セン埴以為器。
 当其無、有器之用。
 鑿戸ユウ以為室。
 当其無、有室之用。
 故有之以為利、無之以為用。

2013年5月30日木曜日

10.反省

○老子の原文を道具として解釈したもの

 目標に向かってまい進しているだろうか。
 初心を忘れていないだろうか。
 自分を裏切るようなことはしていないか。
 まともな社会に暮らしているだろうか。
 何事にも対応できる備えがあるか。
 才能をひけらかして、目立っていないか。
 自然は生み出し育てるが、所有も支配もし
ない。
 だから慕われる。


○老子の読み下し文

 営魄(えいはく)を載せ、一を抱き、能く離
るることなからんか。
 気を専らにし柔を致して、能く嬰児(えいじ)
たらんか。
 玄覧(げんらん)を滌除(てきじょ)して、能
く疵(そこな)うことなからんか。
民を愛し国を治め、能く無為ならんか。
 天門開闔(てんもんかいこう)して、能く雌(し)
とならんか。
 明白四達にして、能く知らるることなから
んか。
 これを生じこれを畜(やしな)い、生じて有
せず、なして恃(たの)まず、長じて宰(さい)
せず。
 これを玄徳(げんとく)と言う。


○老子の原文

 載営魄抱一、能無離乎。
 専気致柔、能嬰児乎。
 滌除玄覧、能無疵乎。
 愛民治国、能無為乎。
 天門開闔、能為雌乎。
 明白四達、能無知乎。
 生之畜之、生而不有、為而不恃、長而不宰。
 是謂玄徳。

2013年5月29日水曜日

9.引き際

○老子の原文を道具として解釈したもの

 執着し、独り占めすれば滅ぶ。
 鋭い物でもやがては鈍くなる。
 宝を蔵にしまいこんでは、価値がない。
 裕福になって威張っていると不幸を招く。
 やることをやったらさっさと身を引け。


○ 老子の読み下し文

 持(じ)してこれを盈(み)たすは、その已(や)
むるにしかず。
 揣(う)ちてこれを鋭くするは、長く保つべ
からず。
 金玉 堂に満つれば、これを能く守るなし。
 富貴にして驕(おご)れば、自らその咎(とが)
を遺(のこ)す。
 功遂げ身退くは、天の道なり。


○老子の原文

 持而盈之、不如其已。
 揣而鋭之、不可長保。
 金玉満堂、莫之能守。
 富貴而驕、自遺其咎。
 功遂身退、天之道。

2013年5月28日火曜日

8.水形

○老子の原文を道具として解釈したもの

 理想的なのは水だ。
 水はよく利用され、遠ざけられることがな
い。
 場所を選ばず存在している。
 だから道とよく似ている。
 地のいたる所にあり、形を場所に合わせて
変化させ、何にでも混ざるが、性質は変わら
ず、表面は静かだが、内面は活発で、いざと
なったら他の物も動かす。
 水は無欲だから、受け入れられる。


○老子の読み下し文

 上善は水のごとし。
 水は万物を利して争わず。
 衆人の悪(にく)む所にいる。
 故に道に幾(ちか)し。
 居には地を善(よ)しとし、心には淵(ふか)
きを善しとし、与(とも)にするは仁を善しと
し、言には信を善しとし、正には治を善しと
し、事には能を善しとし、動には時を善しと
す。
 それただ争わず、故に尤(とが)なし。


○老子の原文

 上善若水。
 水善利万物、而不争。
 処衆人之所悪。
 故幾於道。
 居善地、心善淵、与善仁、言善信、正善治、
事善能、動善時。
 夫唯不争、故無尤。

2013年5月27日月曜日

7.永く保つ秘けつ

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然は永遠だ。
 自然が永遠なのは、子孫を生み出す必要が
ないからだ。
 だから死ぬことはない。
 聖人は世襲にせず、自分の身を投じ、家族
だけを重んじることなく、外部に目を向ける。
 血筋に囚われることがないから、権力を保っ
ていられる。


○老子の読み下し文

 天は長く地は久し。
 天地の能く長くかつ久しきゆえんの者は、
その自らを生ぜざるを以てなり。
 故に能く長生す。
 ここを以て聖人は、その身を後にして身は
先んじ、その身を外にして身は存す。
 その無私なるを以てにあらずや、故に能く
その私を成す。


○老子の原文

 天長地久。
 天地所以能長且久者、以其不自生。
 故能長生。
 是以聖人、後其身而身先、外其身而身存。
 非以其無私耶、故能成其私。

2013年5月26日日曜日

6.無尽蔵

○老子の原文を道具として解釈したもの

 地中のマグマは尽きることがない。
 これを大地の母と言う。
 火山の口を大地の子宮と言う。
 いくらでもあり、使ってもなくならない。


○老子の読み下し文

 谷神(こくしん)は死せず。
 これを玄牝(げんぴん)と言う。
 玄牝の門、これを天地の根と言う。
 緜緜(めんめん)と存するがごとく、用いて
動せず。


○老子の原文

 谷神不死。
 是謂玄牝。
 玄牝之門、是謂天地之根。
 緜緜若存、用之不動。

2013年5月25日土曜日

5.無分別

○老子の原文を道具として解釈したもの

 自然は善も悪も、あるがまま生み出す。
 聖人は人々を分け隔てなく扱う。
 自然は「ふいご」のようなものか。
 空っぽだけど、動かせばいくらでも空気
(生命)が出てくる。
 情報が多いと混乱する。
 心を自由にし、自分を見失わないようにし
なければいけない。


○老子の読み下し文

 天地は不仁なり、万物を以て芻狗(すうく)
となす。
 聖人は不仁なり、百姓を以て芻狗となす。
 天と地との間は、それ猶(なお)タク籥(やく)
のごときか。
 虚にして屈せず、動きていよいよ出(い)ず。
 多言なればしばしば窮す。
 中を守るに如(し)かず。


○老子の原文

 天地不仁、以万物為芻狗。
 聖人不仁、以百姓為芻狗。
 天地之閒、其猶タク籥乎。
 虚而不屈、動而愈出。
 多言数窮。
 不如守中。

2013年5月24日金曜日

4.無限のつながり

○老子の原文を道具として解釈したもの

 道そのものには何もないけれど、無限に続
いている。
 自然に終わりがないようなものだ。
 険しさもなだらかにし、迷いをなくし、景
色をあらわにし、真実を見せる。
 なにものにも動じず、存在している。
 自然に先駆けてあるのかもしれない。


○老子の読み下し文

 道は冲(ちゅう)なれども、これを用うれば
或いは盈(み)たず。
 淵(えん)として万物の宗に似たり。
 その鋭を挫(くじ)き、その紛を解き、その
光を和らげ、その塵(ちり)に同ず。
 湛(たん)として或いは存するに似たり。
 われ誰の子なるかを知らず、帝の先に象(に)
たり。


○老子の原文

 道冲而用之或不盈。
 淵兮似万物之宗。
 挫其鋭、解其紛、和其光、同其塵。
 湛兮似或存。
 吾不知誰之子、象帝之先。

2013年5月23日木曜日

3.争いの素

○老子の原文を道具として解釈したもの

 人に優劣をつけなければ争わない。
 宝物を自慢しなければ、盗まれることはな
い。
 欲望を刺激しなければ、心を乱すことはな
い。
 だから聖人の政治は、人々を平等に扱い、
利益を分配し、倹約に努め、結束を強くする。
 常に人々に目標を示し、それに向かって一
心不乱に行動するように働きかける。
 自然の流れに逆らわなければ、政治は乱れ
ることはない。


○老子の読み下し文

 賢をたっとばざれば、民をして争わざらし
む。
 得難きの貨を貴ばざれば、民をして盗みを
なさざらしむ。
 欲すべきをしめさざれば、民の心をして乱
れざらしむ。
 ここを以て聖人の治は、その心を虚しくし、
その腹を実たし、その志を弱くして、その骨
を強くす。
 常に民をして無知無欲ならしめ、かの知者
をして敢えてなさざらしむ。
 無為をなせば、即ち治まらざる無し。


○老子の原文

 不尚賢、使民不争。
 不貴難得之貨、使民不為盜。
 不見可欲、使民心不乱。
 是以聖人之治、虚其心、実其腹、弱其志、
強其骨。
 常使民無知無欲、使夫知者不敢為也。
 為無為、則無不治。

2013年5月22日水曜日

2.相反するもの

○老子の原文を道具として解釈したもの

 みんなが「綺麗にしよう」と言っているの
は醜いところがあるからだ。
 みんなが「善をおこなおう」と言っている
のは悪いところがあるからだ。
 同じように、有無、難易、長短などの相反
するものがあり、高下のような傾きがあり、
音と声は混ざることはなく、それに前後の区
別もある。
 だから聖人と言われる人は、自然のあるが
ままを受け入れ、人の言っていることに惑わ
されない。
 自然はすべてを受け入れるが独占せず、循
環させ、淘汰する。


○老子の読み下し文

 天下皆美の美たるを知るは、これ悪のみ。
 皆善の善たるを知るは、これ不善なり。
 故に有無は相生じ、難易は相成し、長短は
相形し、高下は相傾き、音声は相和し、前後
は相随う。
 ここを以て聖人は無為の事におり、不言の
教えを行う。
 万物おこりて辞せず、生じて有せず、なし
て恃(たの)まず、功成りて居らず。
 それただ居らず、ここを以て去らず。


○老子の原文

 天下皆知美之為美、斯悪已。
 皆知善之為善、斯不善已。
 故有無相生、難易相成、長短相形、
 高下相傾、音声相和、前後相随。
 是以聖人処無為之事、行不言之教。
 万物作焉而不辞、生而不有、
 為而不恃、功成而弗居。
 夫唯弗居、是以不去。

2013年5月21日火曜日

1.認知

○老子の原文を道具として解釈したもの

 道はない。
 名前もない。
 もともと名前なんてなく、人が名前をつけ
て物の区別ができるようになった。
 それと同じように、道のないところを人が
歩いたから道となり区別できるようになった
のだ。
 区別できるようになったのは人の知恵(動
作)であり、自然が変化したわけではない。
 人が知恵を働かせる以前から自然の道理は
変わらず続いている。


○老子の読み下し文

 道の道とすべきは、常(つね)の道にあらず。
 名の名とすべきは、常の名にあらず。
 無名は、天地の始めなり。
 有名は、万物の母なり。
 故に 常に無欲にして、以てその妙を観(み)、
常に有欲にして、以てその徼(きょう)を観る。
 この両者は同じく出で、名を異にし、同じ
く之を玄(げん)と謂う。
 玄の又玄、衆妙の門なり。


○老子の原文

 道可道、非常道。
 名可名、非常名。
 無名、天地之始。
 有名、万物之母。
 故常無欲、以観其妙、
 常有欲、以観其徼。
 此両者、同出而異名、同謂之玄。
 玄之又玄、衆妙之門。

2013年5月20日月曜日

はじめに

 中国の古典で有名なものに「孫子」がある。
 孫子は、戦国乱世を生き抜く知恵を書き記
した兵法書だが、今でもビジネス書に混じっ
て解説本が何冊も出版されるほど、会社経営
のバイブル的存在になっている。ただし、私
が「逆境に勝つ孫子」に書いたように間違っ
た解釈の孫子であり、実践で使うと逆に損害
がでるので注意する必要がある。

 孫子と同じぐらい示唆にとんだ古典が「老
子」なのだが、どの解説書を読んでも精神的
なことしか書かれておらず、理解し難く、孫
子ほどの注目はない。

 では孫子と老子では何が違うのか?

 孫子は、具体的な内容が書かれているいわ
ば道具。それに比べ、老子は抽象的な内容が
書かれている材料のようなものだ。
 だから老子の解説書を読んだだけでは、ど
う応用すればいいのか分からず、役に立たな
いのだ。

 道具はすぐに使えて便利だが、使う人が道
具にあわせなければならず、道具に慣れる必
要がある。
 材料は自分で道具にしなければならないが、
どんな道具でも作ることができ、自分にあっ
た道具にすることができる。
 そこで、老子という材料を道具として解釈
してみた。
 すると呪術のような強大な力を秘めている
ことが分かった。ただし、呪術といっても呪
いのまじないではなく、自然の力を利用して
役に立てようとするシャーマニズム(シャマ
ニズム)のようなものだ。

 ここに書いた道具を利用するのもよいし、
参考にして自分の知識や経験をもとに、自分
にあった道具を作れるようになれば、自然の
力を味方につけて、孫子以上に役立てること
ができるようになるだろう。
 推理小説の暗号を解くのに似て、頭の体操
にもなる。

 では始めよう。